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ア国農牧業発展に尽力=オイスカ小冊子で 山形県人・伊藤博士を紹介

1月8日(水)

山形県の高橋和雄知事が推薦のことばの中で書いた。「伊藤博士は、一八七五年(明治八年)、山形県河北町に生まれました。(中略)一九一〇年(明治四十三年)にアルゼンチンに移住されました。ア国の農牧業発展に尽くした日本人移民として、私たちの誇りとなる人物であります」。伊藤清蔵博士の功績を記述した日本語とスペイン語併用の小冊子が、昨年十二月、発行された。
 発行者はオイスカ・ウルグァイ総局(ロペルト・ロング会長)で、表題は「アルゼンチンの大牧場主・草の根技術協力のパイオニア 伊藤清蔵博士」となっている。
 伊藤博士は一八九二年、札幌農学校(今の北海道大学)に入学して一九〇〇年に首席で卒業している。ドイツに留学した縁でドイツ人女性と結婚して、その縁で一緒にアルゼンチンに移住した。札幌農学校での恩師は後に国際連盟事務次長になった新渡戸稲造教授である。
 北海道大学の中村睦男総長は「太平洋の架け橋となりたい、という若き日の思いを国際社会のなかで生涯かけて実現した新渡戸先生に倣い、伊藤博士は、日本とアルゼンチンの大きな架け橋を築いた。新渡戸先生のボランティア活動の精神を引き継ぐものである」と述べている。
 この小冊子は在亜山形県人会の佐藤駒雄会長の協力で実現した。オイスカ・ウルグァイが北海道大学と連係して「ウルグアイ・フィールド科学センター」プロジェクトを立案する過程で、山形県出身の大先輩が草の根レベルで、アルゼンチンの農牧開発に貢献した事実に遭遇したもの。
 オイスカ・インターナショナルの中野良子総裁も「この小冊子をお読みになる方々が伊藤清蔵博士の思想・活動に共鳴されて、フィルド科学センターの主旨もご理解し、ご支援くださることを希望いたします」と関係者に呼びかけている。
 日本・アルゼンチン・ウルグァイを結ぶ奇縁の連続が、伊藤清蔵博士の生涯を通して現在に甦っている一冊である。

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