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ワラルを訪ねて=上=日本人専門家願う声=3人のテロ犠牲者の慰霊碑も

3月21日(金)

  ペルーの国土は海岸(コスタ)、高地(シエラ)、熱帯低地(セルバ)という三つの地帯に分けられる。
 首都リマはコスタ地帯に位置しており、緑一つ見ることのない果てしない砂漠が北ペルーからチリまで数千キロにまたがって広がる。
 黒い砂を含んでいるため全体で見るとひどくくすんだ印象を与える砂漠地帯をリマから北へ約六十キロ、荒涼とした風景は一転、さとうきび畑や綿の豊かな緑へと変わる。
 ワラルである。十二万ほどの人口を持ち、穀物、果実などが多く生産され、リマ首都圏への重要な食料供給地帯となっている。
 そののどかな農村地帯の一角にワラル野菜生産技術センターがある。
 国際協力事業団(JICA)は『野菜生産技術センター計画』として八五年の事前調査を皮切りに、同センターへの支援を行ってきた。
 八九年には事務所の建設支援、九十年までに行った機材供与は三億二千万円に上り、専門家の派遣も三十人を数えるなど、事業団がかなり力を入れて行ってきたプロジェクトであった。
 現在、同センターの事務所入り口には、九一年にテロリストの犠牲になった宮川清忠リーダー、金良清文調整員、中西浩専門家、三人の名前が刻まれた慰霊碑が建っている。
 セサル・パレデス同センター長は宮川リーダーの使っていた部屋をそのままの状態で残し、「この部屋にいつ再び専門家が来てもいいように掃除は欠かしていない」と話す。 
 壁に掛けられたホワイトボードには宮川リーダー自身が書いたスケジュール表が当時のままで残っている。
 現在、同センターの名称には宮川リーダー、研究棟には中西専門家、講堂には金良調整員の名前が冠されている。
 同センターはDNA研究や有機栽培の研究に約四十人の農業技師が取り組んでいるが、当然日本人技術者の姿はなく、様々な検査機器や設備も十分に活用されることなく、老朽化している状態だ。
 毎年百人以上の農業普及員や大学生の研修生を受け入れ、技術指導を行うなどの活動を展開しているが、関係者の日本人技術者を望む声は大きい。
 「亡くなった三人のためにもワラルに再び日本人専門家を派遣したい」と話す筧克彦JICAペルー事務所所長。
 その思いが近い将来実現することを同センター
関係者は願うのみである。(堀江剛史記者)

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