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モジ「みよしさん」詣で=奉納相撲、今年も開催=農場の一角に「秋田の杜」

4月23日(金)

 勝利成功、事業繁栄のご利益があるとされ、「みよしさん」「さんきちさん」の呼び名で全国的に知られる秋田県太平山の三吉神社。その三吉霊神がブラジルにも祀られている。サンパウロ市から車で約二時間、モジ・サレゾポリス街道三〇キロ―。現在の神官、加藤伸一さん(二世、五五)の農場に鎮座する「みよしさん」を詣でた。

 キャベツ、アルファッセなどの野菜が植えられた七ヘクタールの農場を車で分け入っていくと、コンクリート製の鳥居が見えてきた。朱色に塗られていたりはしない。神社も同じく、いかにも手作りの素朴な風情をたたえている。
 「まるで山の中にいる感じでしょう」。境内では、秋田杉とパラナ杉が仲良く並ぶ。青々とした唐辛子の木が自生している。「小鳥が実を食べるに来るので、刈らないで放置してるんです」と加藤さんはニコリ。
 この神社は八九年、「山の木を集めて作った」ものだが、ブラジルの「みよしさん」には、およそ半世紀の歴史がある。モジ市の農業者、故武田喜代治さんが本山から護符を賜り、自分の農場の高台に奉ったのが始まりだそうだ。六〇年には、県人会創立を祝って来伯した、ときの小畑勇二郎知事が参拝したと聞いた。
 加藤さんは父が秋田県出身、母方の実家が日本の神社という境遇の生まれだ。武田さんを手伝うようになったのも、自然の成り行きだった。ほどなく、神官となることを決意。七九年、八一年に訪日し、それぞれ二カ月間、本山でみっちり研修を積んだ。
 農業者であり、神官である加藤さんはもうひとつ、ノヴァ・セントラル相撲連盟の会長としての顔をもつ。モジ・サレゾポリス周辺はかつて「植民地に住む日本人の半分は相撲取りだった」と、加藤さんが回顧するほど、相撲が盛んだった。サレゾポリスの曙日本人会館には常設土俵がつくられ、今も残る。
 毎年、全伯大会を前に日本人会の土俵で開かれるノヴァ・セントラル地域の予選大会は、ブラジル三吉神社の奉納相撲を兼ねている。初代優勝旗は八〇年、県人会二十周年を記念し、佐々木喜久治知事(当時)が贈ったもの。現在は二代目で、三年前に秋田県で開催された相撲の国際大会に参加したブラジル相撲協会の役員が三吉神社を詣で、宮司から寄贈されたのだという。
 父を引き継ぎ、行司となった加藤さん。十八日には今年の奉納相撲があり、威勢のいい裁き声が土俵内に響き渡った。この日は、加藤さんの招きもあり、サンパウロから秋田県人会の一行約三十人が大会見学にきていた。だが、三好霊神との「面会」は叶わなかった。
 というのも、神社に続く農場内の道が未舗装で大型バスが入って行けなかったせいだ。市役所に舗装願いを出している最中という。「でも、秋田の人が来られることはほとんどない」と、加藤さんは苦笑い。「日本の人が贈ってくれた鐘があるのですが、まだ鳴らないようになっている。落成の時にはぜひ、秋田県人に集まって欲しいのですが……」
 毎月一、八、十七の各日に祭りを開いている。一日はブラジルだけの祭りだ。「特別に交通安全の日に定めている。新車のお祓いのために来る人が多いもので分けた」そうだ。
 物珍しさも手伝ってか、非日系の参拝者が多いことから、加藤さんはユニークな試みを実現した。境内にカトリックの礼拝堂を建立したのだ。「彼らは神社だけではもの足りないんじゃないかと思ってね」。祭壇には鳥居、お神酒と聖母アパレシーダが同居している。場所はちょうど、秋田杉とパラナ杉が見下ろすあたりだ。
 拍手を打ち、神社を後にし、奉納相撲の会場に戻った。ブラジル人力士が日系力士を圧倒している。〃女性〃が何食わぬ顔して土俵に上り砂を掃いてる。
 ブラジルのおおらかな混交ぶりには、秋田の霊峰太平山から、野に下り、海を越え、遥かブラジルの農村に移住した「みよしさん」も微笑んでいるに違いない。

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