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帰伯逃亡デカセギ問題に憂慮=犯罪者引渡し協定への署名活動など=静岡県人会が協力を決議=母県で頻発=「ほって置けない問題」

2006年2月24日(金)

 静岡県人会(鈴木静馬会長)は十八日午前、定期総会を開催し、頻発する帰伯逃亡デカセギ問題に関して、署名などで協力していくことを決議した。これは殺人事件や交通事故を起したデカセギ日系人が、警察から指名手配される前にブラジルへ逃げ帰る事例がたびたび起き、地元の静岡新聞などでも大きく報道されていることを受けたもの。そのほか総会では、来年の創立五十周年式典に向けて準備を進めていく件などが報告され、昼からは新年会となった。
 この総会決議は、立て続けに県内で起きたデカセギの不祥事を受けたもの。〇三年末現在で、ブラジル人登録者数は愛知県の約五万七千人に次いで全国二位、四万千五百人を数える。
 昨年十一月に静岡県浜松市のレストランで起きた日本人店主強殺事件のアルヴァレンガ・ウンベルト・ジョゼ・ハジメ容疑者(34)がブラジルに帰国逃亡して先ごろ国際手配された。
 さらに同月に同県湖西市で起きた交通事故で山岡理子ちゃん(当時二歳)が死亡して、フジモト・パトリシア容疑者(31)が帰伯逃亡した。被害者の山岡夫妻が今月十日、日伯間の犯罪人引渡し条約の締結や、代理処罰の制度確立を国に働きかけることを求める嘆願書を浜松市長に渡し、署名活動を始めることを表明した。
 協力していくことを決議した鈴木会長(73、袋井市)は、「このような問題が、ブラジルに対する県民感情に悪影響を与えることに憂慮しています。日本から署名用紙などが届きしだい、みなにお願いしていくつもりです」と語った。静岡県議会とサンパウロ州議会は友好同盟を一九七八年に締結しており、そこを通して要望書を連邦政府にあげていくことも可能では、という。
 この提案を受け、同会理事の松浦アントニオさん(75、二世)は「記事を見るたびに胸が痛くなる。罪のない子どもを死なせて、ブラジルに逃亡するなどほっておけない問題です。残された家族が満足できるよう、ちゃんと法廷で裁いてもらうべき」と被害者に共感した心情を語り、総会に集まった約七十人から温かい拍手が沸いた。
 その他に総会では、来年八月の創立五十周年式典に関して、記念誌編纂を進めるなどの準備をはじめることが同会長から説明された。「山本敬三郎県知事以来、二十数年も来伯されていない。この機会にぜひ一度来て欲しい」との期待を鈴木会長は語った。
 また、大橋健三議長の進行により、〇五年事業報告、同決算報告、監査報告が行われ拍手で承認された。総収入は約十一万二千四百五十レアル、総支出は十一万六十五レアルで剰余金が二千三百八十五レアル。
 〇六年事業計画、同予算案も説明され、拍手で承認された。総支出は十万八千五百四十レアルと緊縮財政で、総支出は同額だが六百三十六レアルの赤字。「寄付などで埋める見込み」と説明があった。
 さらに評議員と監査役選挙を実施。最後に県知事から二〇〇五年優良海外移住者表彰が藤田勇、本田容子両氏に、高齢者表彰が鈴木登志枝(88)、氏川光子(88)、大城徳次(88)、阿形順一郎(77)、立岡立(77)の五氏に贈られた。
 正午過ぎから新年会となり、長老の後藤宗治相談役が乾杯の音頭をとり、なごやかに談笑した。

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