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県連「ふるさと巡り」=パラグアイ・アルゼンチン・ブラジル=3カ国走破=連載(終)=フロリアノーポリス=「非日系と一緒に活動」=サンバ会場で和太鼓練習

2006年10月25日付け

 旅も最終日、九月二十九日午後五時。一行はサンタカタリーナ州の州都フロリアノーポリスにあるラゴアの展望台を訪れた。美しい海岸線と湖を見渡しながら、旅の思い出にと土産を選んでいると、一人の体格のいいブラジル人女性が声をかけてきた。
 「ボア・ノイチ!」。同市のニッポ・カタリネンセ協会の渉外担当を務めるモラエス・デ・ナジールさんだ。わざわざこの日の夕食会を前に一行を迎えに来てくれた。
 「前世は絶対日本人だったと思うわ」。そう話すモラエスさんは挨拶もそこそこに、マシンガンのごとく日本好きをアピールする。「パラナやサンパウロで日系のイベントがあれば必ず出かける」ほどだ。
 明るく元気な彼女を乗せた車の案内で、一行は夕食会場となった市内のレストランへ。会場は会員の家族や日本語学校の生徒らが集まり、賑やかな雰囲気。この日の交流が旅の最後だと思うと急に感慨深くなる。
 夕食会では地元協会、新里エリージオ善和会長の歓迎の言葉に続いて、一行から和田一男さんが乾杯の音頭をとってはじまった。
 会長の話によれば現在会員は約三百家族。その内非日系の会員が三分の二を占める。中でも大学生の会員が目立つ。
 というのも当地には連邦と州立の二大学があり、全伯各地はもちろん世界各国からも学生があつまる〃学都〃。そこに通う大学生が「日本のアニメや宗教、技術、サムライやについて知りたい」と入会するのだという。
 「この町で一人暮らしをする学生の家族になってあげられたら」。新里会長のそんな思いもあって昨年、同会は地元の大学生や一般会員などを集めて運動会を初めて開催。「日本の慣習である運動会を通して交流の和がぐっと広がった」。
 また昨年十月には地元の大学生と十代の若者が中心となって太鼓部も結成された。その名も「島太鼓」。島と大陸が結ばれてできているこの町らしい名前だ。
 同太鼓部は市内のサンバ会場「サンボードロモ」の一室を借りて毎週土曜日に練習している。指導者もサントスとマリンガから来た日系大学生の二人。最近ではこの太鼓部のパラナ州出身者が中心となって、マツリダンスのグループを結成する動きもあるそうだ。
 話を聞いていると、全伯から集まった若者たちが、同会の活動を通して日本文化の発展・継承を支えている様子が伝わってきた。
 「この町では日本人だけで会を運営していくのは難しい。日本文化に興味を持つ非日系と一緒に活動していくことが大事だと思うわ」。モラエスさんの言葉には重みがこもっていた。
 サンパウロから移り住んだ金親寿恵さんは、同会会員になって四年。ブラジル人の若者に日本文化について聞かれることが増え、「日本人としてもっと勉強しなきゃ」と思いはじめたという。「ここにきてそう感じた日系の人は多いと思いますよ」。
 同会が結成されて二十三年。会員の日系人でも二、三世が運営の中心。日系人と非日系人の結婚が当たり前のこの地で、大学都市の環境を活かし日本文化の伝承は少しずつ進んでいる。
  ◎  ◎
 「百聞は一見に如かずですね」。プロミッソン出身の二世、綱島クララさん(79)は旅の感想をそう述べた。「各移住地の入植された当時の様子をひしひしと実感できた。小さい時に親からいろいろ話を聞いていたけど、ふるさと巡りにいったおかげで移民の苦労が身にしみてわかるようになった」。
 サントス在住で今回初参加の大橋健三さんは、九日間の旅を振り返り「南米の歴史、再発見でしたね」。移住地での交流の他にも、三カ国にまたがり今も残るインディオの教化部落跡を観光できたことが大きな思い出となったようだ。
 三十日午前十時、出発地のサンパウロ市リベルダーデ広場に到着。「また会いましょう」「お世話になりました」。旅の仲間に別れをつげた参加者たちは、いっぱいに詰まった思い出を胸に家路へついた。
 (おわり、池田泰久記者)

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