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移民の父=上塚翁の人生たどる=本紙連載「荒野の人」=百周年記念して出版=18日に出版記念会=能美尾さん=「移民想った温かい人」

ニッケイ新聞 2007年10月9日付け

 来年の日本移民百周年を記念して、「移民の父・上塚周平伝『荒野の人』」(能美尾透著、日本語版)が今月中旬、ニッケイ新聞社から出版される。同著は〇五年に本紙紙上で掲載した能美尾透さん(75、岡山県)の連載に加筆したもの。今月十八日午後六時から、ブラジル日本移民史料館(文協ビル八階)で出版記念会を催す。ニッケイ新聞社、同史料館、レアル銀行が共催。能美尾さんは「この作品は上塚さんの霊が乗り移ったように毎日必死になって書いたもの。この機に多くの人に読んでもらえたら嬉しい」と話している。
 著者の能美尾さんは旧日伯毎日新聞(現ニッケイ新聞)の記者。同著は上塚の出生から皇国植民会社の現地代理人としての奔走ぶりや、上塚植民地の造成などの記録を分かりやすい文体で描いている。
 〇四年末に同植民地(現・サンパウロ州プロミッソン市)を訪れ、同地で上塚の〃墓守〃をする安永忠邦さんなどにも取材。
 本書では「夕ざれば樹かげに泣いて珈琲もぎ」など、俳句に親しんだ上塚の代表的な句も数多く紹介されている。
 また巻頭には、熊本市の旧制第五高等学校(通称・五高)の英語教師として赴任していた文豪・夏目漱石との卒業写真など、往年の上塚の写真も掲載されている。
 能美尾さんは同書の執筆について「伝記物は文献だけに頼ると盗作になる。取材を土台にしたオリジナルの作品に仕上げるのが一番大変だった」と振り返る。
 上塚の印象については「人間的に好きな人。自身も大変苦労しながらも移民の暮らしを想った温かい人だった」と話している。
 【著者略歴】能美尾透=本名・杉田憲郎(すぎたけんろう)。一九三一年生まれ。四七年、兵庫県日鉄広畑船舶学校(機関科)卒、日鉄船舶部につき外交航路。五七年、ブラジル渡伯。短期間農業をして出聖、銀行員、日伯毎日新聞社記者、独立して建築業。文学に親しむ。(本書より引用)
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 同書は全百六十八ページで初版一千部。レアル銀行が協賛した。
 十八日の出版記念会会場では三十レアルで販売。後日、各日系書店で三十五レアルで販売する。十二月にはポ語翻訳版(二千部)の発行を予定している。価格は未定。

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