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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年12月21日付け

 天皇皇后両陛下の皇太子時代のお写真が、サンパウロ市内のゴミ回収所に〃保管〃されていた、という年末のニュース。これぞ世代交代が進んだブラジルにおける出来事、といえる▼文協の元会長の山内淳さん(二世)が、正直ショックだ、時代の流れか、と感想をもらしたというが、この「問題」に意識ある人たちの大方の思い、慨嘆であろう▼これまでコロニアで慨嘆された、一世が大事にしてきた物品の(子孫による)廃棄についていえば、日本語書籍、位牌、仏壇などがあった。さまざま「どうすればいいか」議論はあったが、これという妙案はないようである▼コロニアにおいて皇室のお写真を敬って大切にしてきたのは、子供移民を含めた戦前移民である。戦後移民は、戦後教育の所為(せい)もあって、皇室に対して屈折したところがなくもない。だが、皇室は敬うべき対象である、とすることに、異論をはさむ人は少ない。これは、あくまで一世についていえる▼世代が交代していけば、いや、交代しなくても、ブラジル人である子弟たちに皇室敬愛を説いて、身につけさせるのはむずかしい。両親や祖父母の思いを尊重する子孫の気持の深浅によって、残された大切ものへの対処は、若干は違ってこようが、期待は持てまい▼では、これからも廃棄が起こり得ると想定して、現在大切に所蔵しているお写真などをどうすればいいのか。自身の亡きあとを充分に考慮し、やはり自分にふさわしく始末しておくしかない。(神)

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