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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年12月27日付け

 現在ほど、全伯各地で同時に記念事業が企画されたことはない。サンパウロ州、パラナ州までは周年事業の定番だが、百周年ではリオ州、ミナス州、南マ州、サンタカタリーナ州、南大河州、エスピリットサント州、ブラジリア、バイア州などほぼ全域で何らかの記念プロジェクトが進められている▼とくに各地で大型構想を進めるパラナ勢の健闘が目立つ。このように地方が盛り上がる一方、〃中央〃たるサンパウロ市がパッとしない。これと同じ傾向が農業面でもみられる▼先日、日系社会面で連載したJATAKの調査によれば、全伯で五十二もの日系農協が活動している。コチア産組や南伯農協という大樹こそ朽ちたが、地方に張られた根は残った。数の上で集中しているのはサンパウロ市近郊だが、最大規模を誇るのはパラナ州ロンドリーナのインテグラーダ農協で、地方部の方が特色のある生産活動を行っているという▼件の調査で目を引いたのは、日系農協の組合員が所有する農地面積は約二百万ヘクタール以上と推計され、ブラジル耕地面積の三・五%に相当するという数字だ。この面積は〇六年の日本の全農地面積四百六十九万ヘクタールの約四三%にあたる▼コチア全盛期の耕地面積がどうか知らないが、決して劣るものではないだろう。大樹は朽ちても新芽は育っている。かつての強固な団結こそないが、形を変えて、むしろ力を付けているのかもしれない▼全伯の日系団体も、中央としての文協の権威は墜ちたが、むしろ、各地で地元社会に根付いた活動をしている。そう思えば、この百周年は新しい形の日系社会ネットワークの幕開けかもしれない。(深)

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