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活気あふれる2008年展望=めざましい経済発展迎え=生まれ変わるブラジル=世界に伍すブラジル経済

ニッケイ新聞 2008年1月1日付け

 【エザーメ誌九〇三号】ブラジルのように活気に溢れるサイクルで成長する国は、世界でも珍しい。エザーメ誌が創刊した四十年前、ブラジルは近代資本主義に向けてヨチヨチ歩き始めた。自家用車は、夢のまた夢だった。来る二〇〇八年を展望すると、これまでの紆余曲折の歴史がウソのようだ。試行錯誤のブラジルが、生まれ変わった。四十年間は、二〇〇八年から始まる新時代の訓練期間だったようだ。
 四十年前国民の半分は田舎で暮らし、その生活はアルゼンチンやチリに劣る惨めさであった。エンシャーダでコーヒー園の除草をし、その生産性は微々たるもの。輸出は今日のセネガル程度。人間らしい生活をしたのは、大都市の上流階級だけだ。
 過去四十年は、近代資本主義の基礎を築いたのだ。ブラジル産業界では、ダーウインの進化論は通用しなかった。ある日突然、世界で最高の品質と最低価格で製品を売らねばならなくなった。企業淘汰は情け容赦なく、時代の趨勢にのれない会社を切り捨てた。
 ブラジル産業に精鋭部隊が今、出揃った。多国籍企業の世界ランキング五〇〇社にブラジルから一二社が入った。BRICsでは中国の四四社、インドの二一社に告ぐ。ブラジルの後ろにロシアの七社がいる。ブラジルのエリート社員が、世界に伍して動き出したのだ。

人口は2億5千万人へ

 ブラジルの人口増加率は、世界水準をはるかに上回る。二〇五〇年までに、二億五〇〇〇万人に達する見込みだ。人口構成に新しい傾向が現れ、消費市場として未来が期待される。まず高齢化や少子化による個人所得の増加だ。社会保障制度の改革も必要になる。

潜在的競争力が希望

 ブラジルには、世界経済のけん引車となる条件が全て揃っている。グローバル経済は、ブラジルのために饗宴の準備をしてくれた。ただ先進国の先輩が、歩いた道を辿ればよいのだ。中国やインドを見れば分かるはず、ブラジル人は優るとも劣らないことを。
 ブラジルには、潜在的経済力が満ちている。優秀な人材には事欠かない。起業家精神は、全国民に溢れている。一部市場開放を実施したとき、国民は心配した。それがどうだろう、見事に克服した。今度は全面市場開放をしたら、国民は爆発的にその潜在能力を発揮するだろう。
 二〇〇八年はITによる産業革命の時代である。全てが猛スピードで発展する。ITは限りないチャンスを多くの人に提供する。昔は、護送船団方式で国外遠征を行った。そんな時代は終わり、考え方が根底から変わった。少年ダビデが、巨人ゴリアテを倒せる時代となった。
 よい例がチリやチェコだ。何もない小国だが、世界を相手に動き出した。それには、専門家がいうように三つの階段を上ること。第一段は教育、人材育成と動機付け。第二段が技術、技術開発と導入。第三段が政治、選挙でバカな政治家を選ばないことだ。

中国に次ぐ消費市場へ

 ブラジルの消費市場に、月収五〇〇レアル以上の消費者が六〇〇〇万人送り込まれる。消費市場のバイタリティは中国に次ぐ。しかし、トイレット・ペーパーさえ使わない中国のどケチ消費者とブラジルの消費者は質が違う。
 消費者の人口動態はAクラスとEクラスは少なく、Bが一九%、Cが三四%、Dが三四%と均衡している。中間層が増加してきている。消費者の夢は、子供がNintendo、ティーンはiPod。大人はプラズマ・テレビ、Laptop、iPhone、Honda・Civic。

為替高騰で国外進出に拍車

 ビッグ・マックのドル価格が、世界共通なので為替基準に使われる。二〇〇七年九月二十八日の時点で、三・四一ドルであった。同日ブラジルのビッグ・マックは六・九〇レアルで売られた。同日の為替は一ドル=一・八三レアルなので、六・九四レアルだ。〇・〇四レアル安い。
 レアル通貨の将来性は、ビッグ・マックで測れる。為替の外的要因と内的要因を示すからだ。レアル通貨の高騰は輸出産業に厳しいが、ブラジルの外資導入には拍車がかかる。また国内産業が旺盛に国外進出を図り、ブラジルの国旗を世界中にはためかせている。

製造業には試練の年

 フル生産の二四時間体制で寝る時間もない業界があれば、閑古鳥が泣く業界もある。世界の流れに乗れないと生き残れない。IT関係は国内生産を保護すると輸入品より高価になり、国外のスピードに着いていけないことも分かった。問題は生産工程だけではなく、官僚機構も一朝一夕に解決できない難問だ。製造業にとって試練の年らしい。

巨万の富を築く市民も

 社会変動は、米国や英国の倍以上の速度で変化する。ブラジリアン・ドリームの時代が到来する。幼少時代に苦労すると、しっかりした人生の基礎が築かれる。苦労に潰されひねくれないことが肝要だ。ゼロから出発し、巨万の財を築く人が続出する。それはブラジルが完成した社会ではなく、多くの人材を必要としているからだ。

隆盛するショッピング

 ショッピング・センターのブームは、ブラジルのアメリカナイズといえそうだ。ショッピング・センターには、自家用車とマンション群が必要である。それらの要因が相まって、かつてない調子で進行している。市民の消費スタイルも変化し、スーパーは過去四十年で千軒から七万四千軒に増えた。これからはショッピング・センターとスーパーの集合体が中心となるので、消費地は市内から郊外へ移るようになる。

近代化する情報機器

 時代の変化が誰にも意識できるのは、農業の近代化だ。エンシャーダは、移民の苦労話のタネになった。現在は飛行機が農機具となり、空から種まきや除草剤散布、施肥を行う。次に携帯電話の普及で、一人一台時代が到来した。情報交換が容易となり、ビジネス・チャンスも増えた。
 また人口百万都市が、全国に十四も誕生した。乗用車は、低燃費車から快適を求められるようになった。証券取引所は、小学校の先生のように白い制服を着て白墨で黒板に記入した時代がウソのようだ。金融システムのIT化は、ソフトの輸出にまで高度化した。

社員にも経営者意識

 オーナーのワンマン経営や決定権がなかった管理職の時代は終わった。ソツなく自分の仕事をこなす管理職は不要となりつつある。社員といえども経営者意識が要求され、つねに事象を経営者の目で見る訓練が必要だ。これからは結果だけが求められ、理由は説明する必要がなくなる。

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