「神戸の水」4万本陸揚げ=パラナ州パラナグア港で=一同口揃え「おいしい」=3万本をサンパウロ市式典に

ニッケイ新聞 2008年6月4日付け

 【クリチーバ発=池田泰久記者】ブラジルに移住した日本人移民に、旧神戸移住センターや航海中の思い出を懐かしく振り返ってもらおう――。兵庫県神戸市の日伯交流年実行委員会(西村正委員長)によって贈られた「神戸の水」が五月二十四日、パラナ州のパラナグア港に到着、六月三日午前に同港のコンテナ置き場で、陸揚げ式がおこなわれた。贈られた水は五百ミリリットル入りペットボトルの「六甲のおいしい水」(ハウス食品提供)、四万本。今後サンパウロやパラナの百周年協会などに分配され、それぞれの記念式典会場で一世の高齢者らに無料配布される予定だ。
 「神戸の水」は四月九日、神戸のポートアイランドであった出荷式を経て、同月十四日に神戸港を出航。物流会社「山九」と商船三井が協力し、笠戸丸と同じ西回りの南アフリカ経由で運ばれた。
 四万本のボトルのうち、三万本をサンパウロに輸送。関係者によれば、来週中にもサンパウロの移民百周年記念協会(上原幸啓理事長)に引き渡す。残り一万本はローランジアとクリチーバにそれぞれ五千本ずつ分配。ローランジアに送られる水は、今月二十二日の式典会場で配布される計画だ。
 水が入った二つの大きなコンテナを前に、佐藤宗一在クリチーバ日本国総領事、上野アントニオパラナ日伯商工会議所会頭、クリチーバ文協の山脇ジョルジ会長、パラナグア文協の遠藤コウイチ会長、ジョゼ・バッカ・フィーリョ同市市長、同事業に協力する川崎重工業(カワサキ・ド・ブラジル)の関係者らはじめ地元メディアも多数取材に駆けつけた。
 日伯両国の国家斉唱後、日伯協会理事長の西村氏(川崎重工業元副社長)の代理として、澁谷吉雄カワサキ・ド・ブラジル社長があいさつ。「神戸の水は赤道を越えても腐らず、非常に良質でおいしいと外交航路の船員の間では昔から知られている。この水がブラジルで長い間ご苦労された日本人や日系人の方々を癒してくれる事を望みたい」と力強く述べた。
 佐藤在クリチーバ総領事は、一世紀にわたる日本移民の功績を称えたうえで、「この水は移民百周年への記念であり日本側の敬意の現れである」と意義を強調。「おはようございます、みなさん」と日本語で切り出したパラナグア市のジョゼ・バッカ・フィーリョ市長も「地球の反対側からはるばる送られてきた水を心から歓迎したい」とした。
 続いて、この水が無事に移住者の手に届けられるよう、クリチーバ市の宗教法人・ブラジル開拓大神宮の藤好諒山宮司らにより、拝領の儀式がしめやかに執り行われた。
 「六甲のおいしい水」はハウス食品が神戸で採水して販売するミネラルウォーター。今回特別仕様のパッケージが施され、「祝ブラジル移住100周年」の記念ラベルとともにポルトガル語の成分表示が記された。今回の輸送にあたり、輸入税として九千ドルがかかったが、日伯協会が全面負担した。
 陸揚げ式後、出席者らは神戸の水を試飲。気温は二十七度を超え、厚着した人達はうっすらと汗を浮かべながら「おいしい」と口を揃えていた。
 水を飲んだ上野会頭は「日本の人達の温かい思いも感じる。実際に飲んでみてもおいしい」と笑顔。ブラジル側で税関の手続きや関係機関の折衝にあたった、山下亮兵庫県ブラジル事務所所長は「大役を終えてとにかくほっとした」と胸をなでおろしていた。