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新年の国政を展望する=14年の大統領選挙は?=百鬼夜行の政界事情

ニッケイ新聞 2013年1月1日付け

 12年10月における全国選挙の結果を受け、14年の大統領選や全国知事選、さらには18年の大統領選の展開が早くも見えてきている。
 14年の大統領選挙に関して、与党の労働者党(PT)はルーラ前大統領登板の噂もなきにしもあらずだが、メンサロン事件やポルト・セグーロ作戦といった汚職事件への関連性を疑う声も少なくはないことから、ジウマ現大統領の2選の方が順当とも言われる。
 野党側の対抗馬として目されているのは民主社会党(PSDB)のアエシオ・ネーヴェス上議(52)だ。サンパウロ市市長選でジョゼ・セーラ候補が敗れたことで、ここ3度の大統領選で候補者を出してきたPSDBのサンパウロ州地区の立場が弱くなった。逆にミナス・ジェライス州元知事のアエシオ氏は、自分が推薦したベロ・オリゾンテ市長候補がPT候補を寄せ付けず勝利したことで、影響力を強めた。PSDB重鎮のフェルナンド・エンリッケ・カルドーゾ元大統領やセルジオ・ゲーラ党首も「大統領候補にふさわしい」と公言していることからも、次期候補の最右翼と見られている。
 注目すべきは、そのアエシオ氏が全国市長選で、お膝元のベロ・オリゾンテを筆頭にブラジル社会党(PSB)の候補の支援を行なったことだ。PSBは将来的にブラジル政界の台風の目になる可能性があると囁かれている。PSBは12年の全国市長選で市長数を最も増やした政党で、こと州都に限って見れば最多の市長数を獲得したが、同党党首であるエドゥアルド・カンポス・ペルナンブーコ州知事(47)の大統領選出馬も噂されている。
 現在PSBはジウマ政権支持の連立与党を組んでいるため14年の出馬には消極的だと言われているが、カンポス氏は12月初旬には国内総生産(GDP)の微増にあえぐジウマ政権の経済政策を批判するなど気になる動きも見せ始めている。14年にジウマ大統領の副大統領を狙うのか、もしくは鞍替えして、市長選で連携を組んだアエシオ氏と組んで野党側の大統領、もしくは副大統領候補として戦うのか。今後のPSBの方向性には注目が集まる。
 PSB党内にはカンポス氏の他にも、98年、02年の大統領選に立候補(当時は社会大衆党・PPS)したシロ・ゴメス氏(55)と弟でセアラー州知事のシジ・ゴメス氏(49)など党内にはリーダー的人材が豊富だ。
 民主党(DEM)から独立し、全国市長選で党別4位の市長数を獲得した、ジルベルト・カサビ前サンパウロ市市長(52)を党首とする社会民主党(PSD)の行方も見逃せない。カサビ氏は14年のサンパウロ州知事選でPTの送り出す知事候補の副知事の座を狙うことで、PTとの連携を強化することを狙っていると言われる。
 PTと与党を組む民主運動党(PMDB)は14年大統領選ではミシェル・テメル氏の副大統領続投が基本路線だが、リオ市長のエドゥアルド・パエス氏(43)がセルジオ・カブラル・リオ州知事(49)を14年の副大統領候補に希望するなど、こちらも波乱含み。PMDBは18年の大統領選で候補を出せればと考えているようだ。
 このように他党が様々な動きを見せる中、与党PTも18年以降の「ポスト・ジウマ」に向けての動きを見せつつある。その例として顕著なのは、若手大臣経験者を市長や州知事に出馬させる動きだ。サンパウロ市新市長のフェルナンド・ハダジ氏(49)もその一例だ。14年の知事選では、グレイシ・ホフマン内閣官房長官(47)をパラナ州知事へ、アレッシャンドレ・パジーリャ保健相(41)をサンパウロ州知事に立候補させるとの噂がある。
 特にPSDBの地盤であるサンパウロ州においてPTは、今回のサンパウロ市市長選で勝利したのに続き、次の州知事選でも再選を狙うジェラルド・アウキミン現サンパウロ州知事(PSDB)に勝つことで、強いダメージを与えたい意向とされる。打倒アウキミンのためには「ルーラ立候補説」まで浮上しているという。また、PTはミナス州のアエシオ崩しを狙うべく、元ベロ・オリゾンテ市長でもあるフェルナンド・ピメンテル商工開発相(61)をぶつけるとも噂されている。
 また、アロイージオ・メルカダンテ教育相(58)も主要なポストへの強い意欲を見せていると言われ、リンドベルグ・ファリアス上議(41)も副大統領を狙っているとの話もある。
 なお、アエシオ氏の祖父はタンクレード・ネーヴェス元大統領、カンポス氏の祖父はミゲル・アラエス・ペルナンブーコ州知事で、共に60年代の軍政成立時に政界の要職を追われ、80年代の民主化の際に戦った政治家だ。
 かつて、学歴のないところから一歩ずつ地位を築き上げて来たルーラ氏だが、彼が率いるPTの若手有力議員の大半がエリート育ちの時代となった。反骨精神の遺伝子を持つ有力政治家の子孫たち(アエシオ氏ら)が挑戦者となり、かつて挑戦者側にいた現在のエリートたち(PT)と戦う姿を見るというのも、ブラジル政治の歴史の流転振りを見るようで興味深いものがある。

ジウマ後は誰になるか

◆PSDBの最有力候補と目されているアエシオ・ネーヴェス上議
◆PSDBの大統領候補といわれるエドゥアルド・カンポス・ペルナンブーコ州知事
◆PTの「ポスト・ジウマ」最先鋒ともいわれるフェルナンド・ハダチサンパウロ市新市長

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