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「日本は没落と苦悩に喘ぐ国となるのか—否、若者がいる」=フォーリン・プレスセンター理事長 赤阪清隆=第5回=国の勢い取り戻そう=経済成長、女性の社会進出を

ニッケイ新聞 2013年1月10日付け

 昔「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と日本を持ち上げましたが、最近は日本について悲観的になっているといわれるエズラ・ボーゲル・ハーバード大学名誉教授も、今年11月3日付のワシントン・ポストへの投書で、「日本にはまだまだ良いところがたくさんある。犯罪率は低く、基礎的な義務教育の質は依然として世界最高水準であり、産業における品質管理も世界で最も優れている。海外では日本は平和国家として尊敬を集めている。社会には秩序があり、日本での生活は快適である」と言っています。
 このように、日本にはすでに底力があるわけですから、その強みを生かして国の勢いを取り戻しましょう。具体的には何をやれば良いでしょうか。3つ、4つ、私の意見を述べます。
 まず第1に、日本経済の持続的な成長が大事です。経団連やエコノミスト、OECDなどのシミュレーションは、日本経済の将来については相当悲観的に、中国やインド、ブラジルなどの新興国については相当楽観的に見ています。
 しかし、このような予測が正しいのかどうかについて、最近のフォーリン・アフェアー誌などの論文で疑問が提示されるようになっています。日本についても1970年代に、将来アメリカ経済を追い抜くような予測がありましたが、まったく的外れでした。そもそも経済学者の未来予測は大きく外れることが多いのです。
 日本はマイナス成長に突入するという予測を覆しましょう。そのためには、日本の人口の減少に歯止めをかける必要があります。人口が減り続けると予測されていますが、これはあくまでも予測です。政府が色々と家族政策を講じれば、そして若い人たちが将来たくさんの子供を育てるなら、この予測を覆せるはずです。スエーデンやフランスでは、積極的な政府の家族政策のお陰で低かった出生率が近年ぐんと高くなりました。子供を育てるほど大事で楽しいことはほかにありません。皆さん、是非大家族を目指してください。
 第2に、労働力不足を補うためにも、女性の活躍と社会進出がもっと必要です。国会議員に占める女性の割合は世界全体では20%ですが、日本では13.4%でしかありません。女性社長率は全国平均で10%強です。国の本省課長室長相当職以上は2.4%で、日本で働く女性の60%以上が第1子出産後に仕事を離れます。
 女性にもっと頑張ってもらえるような環境を整えないといけません。女性の労働力率を高めることが出来れば、経済成長率も高くなりますし、少子高齢化の影響もかなり相殺できるでしょう。女性の皆さん、頑張って国会議員に、部長、社長になってください。子供を生んでも仕事を辞めないでください。

安保理改革で勢い回復を

 第3に、日本政府に国際的な責任を果たす場を与えるために、念願の国連の安全保障理事会入りを実現しましょう。そうすれば、日本もアメリカやイギリス、フランスのように、世界の動きに否が応でも敏感にならざるを得ません。そして、世界の平和と安全のために責任感を持って貢献することによって、世界の注目も集め、かつ国の勢いも取り戻すことが出来ると信じます。
 私は、将来の日本の国力の衰えを考慮に入れる時、早く安保理改革を実現しないと、もうチャンスは二度とめぐってこないのではないかという焦燥感がして仕方がありません。日本政府も最近やっと重い腰を上げて、すぐに常任理事国とはいかなくても、長く安保理にとどまれるような「準常任理事国」の創設という提案を行ったようです。現在の2年という非常任理事国の任期を長くして、一定期間の後に常任に変わりうる可能性を持つ新たな枠組みの提案と報じられています。
 覚えて置いて下さい。安保理の中にメンバーでいるのと外にいるのとでは、月とすっぽんくらいの違いがあるのです。国連では何事につけ安保理が最も大事な決定を行います。そして国連加盟国は全員、その決定に従うことを義務付けられています。
 安保理で1年7千億円かかる平和維持活動の開始や継続を決めたら、自動的に日本は12.53%、すなわち877億円を支払わなくてはならないのです。こんな大事な決定に参加もせずに、米、英、仏、ロシアや中国だけに任せておいていいはずがありません。もうそろそろこんな不条理で不都合な現状にとことん腹を立てて、「いい加減にしろ」とちゃぶ台をひっくり返してもいい時です。
 戦前の日本は、満州事変の後国際連盟を脱退しましたが、国際連盟では設立当初から、日本も英国、フランス、イタリアと共にずっと常任理事国だったのです。ぜひ一日も早く、長く安保理にとどまれる新制度を実現してもらいたいと思います。そのためには、政府を後押しする国民レベルでの盛り上がりが不可欠です。ぜひ皆さんも、総理官邸や外務省、あるいは選挙区の国会議員あてに、フェイスブックやツイッターで、早く安保理改革をという激を飛ばしてください。(つづく)



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