有名作曲家の下で歌手目指す=10歳の歌姫メリッサちゃん=8月にも家族と日本移住=うるま会館で「チバリヨ!」

ニッケイ新聞 2013年7月2日

 「メリッサ、チバリヨ(がんばれ)!」。サントアンドレー市在住の国吉メリッサちゃん(10、三世)が本格歌手修業を始めるために訪日することになり、そんな温かい声援が沖縄県人会サントアンドレー支部「うるま会館」で23日に開催された送別会で県系人ら300人から贈られた。日本から呼んでいるのは、八代亜紀に『なみだ恋』を提供して120万枚の大ヒットとなった〃育ての親〃の有名作曲家・鈴木淳さん(79、山口)だ。「この子は天才的だ。僕のところでレッスンを」と申し出たという。この8月にも一家揃って訪日し、夢の実現を皆で支えるという。「うるま会館」の小さな舞台から日本へ、そして世界へ羽ばたくか——。

 日本歌謡界の大御所・鈴木淳さんとの橋渡しをしたのは南米通信社の尾和義三郎代表だ。「僕が松竹(映画社)で役者をしていた頃、鈴木さんとは良く飲みに行った仲だった。『こんな子がいるよ』って、何気なくメリッサちゃんが『瀬戸の花嫁』を歌っているところを送ったら、『日本にはこんなに歌える子はいない。僕ところでレッスンを』って返事が来た」と明かす。
 カラオケ好きの父の影響もあって、メリッサちゃんは歌い始めたのはわずか2歳。4歳で初めて「うるま会館」のカラオケ大会に出場、以来こぶしの利いた歌声はコロニアを魅了してきた。
 11年、母親のミレネさんがパウリストン(サンパウロ州選手権カラオケ大会)の最年少部で優勝した時の映像を添えて、アマチュア歌手を発掘する人気テレビ番組「ラウル・ジル」に申しこんだところ、さっそく招待状が来て、メリッサちゃんが「瀬戸の花嫁」を歌った時間帯は「視聴率が約2倍に跳ね上がった」という。以来10回以上出演し、歌唱映像は動画サイトで現在までに約200万回も視聴されている。
 また11年11月に八代亜紀来伯公演の折、その楽曲コンテストが行われ、メリッサちゃんが『愛を信じたい』を歌って優勝。昨年はフジテレビに招待されて訪日し、番組の中で八代亜紀とデュエットする幸運にも恵まれた。
 ビザなどの関係で訪日は8月頃になりそうだが、同支部では早々に送別会が行われた。儀間マリオ支部長は「しばらく逢えない悲しさと、日本で活躍するであろう喜びと半々の複雑な気持ち」と挨拶し、宮城あきらさんも「この小さな舞台からブラジルや日本のテレビに羽ばたいていく人材が出て嬉しい。立派な歌手になって」との言葉を贈った。山城勇さんも「66年にこの会館を作った先輩は若い子弟を育て日伯に役立つ人材をと考えていた。そんな先輩の想いが適った」と喜んだ。
 田場ジョルジ県人会長も「県系人の誇り。日本から良いニュースが来るたびに、ここで集まって祝いましょう」と呼びかけ、与那嶺真次前会長も「昨年BEGINが来た時、本部の歓迎会でメリッサに歌ってもらったら、彼らは感激し、帰り際に比嘉栄昇さんから彼女に渡してってCDを託されたぐらい。彼女はこれからは大舞台で歌うだろうが、この小さな舞台を忘れないで」と結んだ。
 共に訪日する父ミウトンさんは、「家族で支えあい、娘の夢実現のためにできることは全てやる」と意気込んだ。心のこもった一品持ち寄りを食べながら、来場者は夜9時ごろまで国吉家の面々の歌に聴き入った。