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大森さんと小笠原さん(左から)
大森さんと小笠原さん(左から)

【JICA日系研修募集開始】多彩な分野102コース=「ぜひ多くの人の参加を」

 日本における研修を通じて最新技術や知識を習得し、当地で活躍できる人材の育成を目的に、JICA(国際協力機構)が実施する『平成27(2015)年度日系研修員』の応募者募集が始まった。11月20日締め切り。研修経験者2人に感想を聞いた。

 有機農業を学んだ大森さん=「人間的にも成長できた」

ズッキーニを収穫

ズッキーニを収穫

 大森麗シモーネさん(27、三世)が選んだ研修コースは「有機農業基礎研修コース」。去年の4月から約7カ月間、新潟県上越市の「じょうえつ東京農大」で日本における有機農業の状況や技術、生産から出荷まで一連の過程を学んだ。
 現在はUSP医学部の研究基金に勤務し、サンパウロ市衛生局の「健康と環境プログラム」に携わっている。同プログラムの目的の一つに、診療所(UBS)の環境向上があり、その施策として敷地内に有機栽培の薬草園を造っている。将来的には、ファベーラ地域に住民らが共同管理する有機農場を作る計画もあり、研修の成果を発揮されることが期待されている。
 USPで環境マネジメント学を修めた後、オーストラリアへ語学留学。そこで有機農業体験を提供するNGO団体「WWOOF」の活動に参加。農薬を使わず、人体や環境に配慮した有機農業に感銘を受けた。帰伯後、環境教育関係の企業に就職し、1年ほど働いたところで母から同日系研修制度を勧められた。
 オーストラリアでの有機農業体験以来、当地の現状に問題意識を持ってきた彼女は「農薬を使っての大量生産は必要。でも環境や人体への影響を考慮する有機農業は、これからブラジルで必ず必要とされると思った」と研修参加の理由を話した。
 研修は終日「じょうえつ農大」農場で行われ、かぼちゃやアスパラ、そばなどを苗から栽培し、収穫、パッケージ加工までを体験した。

 研修で一番印象に残ったことは、ズッキーニの栽培だ。成長すると葉が横に伸び、隣の葉と重なると虫害を引き起こす恐れがある。それを防ぐために考えられたのが、支柱に葉を結びつける方法で、葉の重なりが抑えられ、防虫効果を得られるだけでなく、横幅をとらないため、栽培個数を増やす事も出来る。

 農薬を使わない分、手間はかかるが「工夫次第で問題は解決できるという大事なことを学びました」と話す。
 また、作物に感謝を捧げる秋祭りや、田舎特有の温かな人付き合いなど日本の農村文化にも親しんだ。「研修先の近所に住むアオキさんとサイトウさん良くしてもらった。今でも手紙で連絡を取る大切な友人です」と笑顔で語った。
 最後に研修を振り返って「夜はとても静かで人生についてよく考えました。ブラジルではできない沢山のことを体験して人間的にも成長できた。ぜひ多くの方に参加してほしいです」と語った。


 文化継承学んだ小笠原さん=日本独特の雰囲気を体験

 小笠原由香タニアさん(40、二世)が参加したのは「日系コミュニティ保持、及び日本文化継承者育成支援」コース。ひろしま国際センターで今年の5月から約2カ月半、研修を行った。日系社会との接点がないまま育った小笠原さんは、5年前に父が亡くなったのを契機に「家族のことをもっと知らなければ」と思うようになり、家族の歴史、ひいては日本移民全体へ関心を持つようになった。
 旅行や仕事で日本を訪れる度、日本での研修への思いは強くなり、研修参加のため、10年間務めていた青少年就労支援のNPO団体を退職。県費研修留学経験者会(ASEBEX)の講演会に参加して準備を進めた。
 研修では、日系社会への理解を深めるため、日本が移住事業を行うに至った歴史的な経緯や、世界の日本移民の状況についての講義を受けた。その後、日系人受け入れに積極的な学校や企業、市役所を訪問。原爆の講習会や和服の着付け、日本料理教室など文化体験も多く行われた。
 最も心に残っているのは、日系人親子を招いて行ったプロジェクトワークだったという。長年、青少年支援事業に携わってきた小笠原さんは、デカセギ子弟の問題に関心を持っていた。
 NPO時代の経験から、一人で不安を抱えこむことが問題を生み出す根本になっていると知っていた小笠原さんは、『100万回生きたねこ』の朗読会、子供と親が立場を入れ替えて、生活の一場面を演じるロールプレイ劇を企画して成功し、参加者からは「自分の気持ちを言葉にするよい機会だった」と好評を博した。

『100万回生きた猫』朗読会の様子

『100万回生きた猫』朗読会の様子

 小笠原さんは現在、教育文化連帯学会(ISEC)が行っている帰国子弟への支援活動「かえるプロジェクト」に参加し、研修で得た知識や経験を活かしている。「直接聞いた子供の声が、私の大きな影響を与えた」と充実した面持ちで研修を振り返る。
 研修を経て「文化を継承していくことが移民の子孫の役割」との思いを強くした小笠原さんは「三、四世が中心となっていく日系社会で、日系人としてのアイデンティーが失われないよう尽力していきたい」と力強く語り、「専門分野の知識向上はもちろん、上下関係と相手を気遣う心が生み出す、日本の職場の独特な雰囲気を体験できた。ブラジルではわからないことが沢山経験できるので多くの人に参加してほしい」と呼びかけた。

 JICAサンパウロ支所の日系研修班長、寺尾マルガリーダさんは、「JICAへの問い合わせはポ語でも受け付けていますし、西語やポ語の通訳が付く研修コースもあります。日本での研修には良い機会が溢れています」と研修への応募を呼びかけた。
 制度説明・経験者体験発表会が以下の日程で行われる。◎18日午後10時=日伯文化連盟、◎11月4日午後7時=パラナ日伯文化連合会◎5日午後7時=マリンガ文化体育協会◎8日午後10時=日伯文化連盟。
 詳細問い合わせは寺尾さん(11・3251・2656)まで。サイト(www.jica.go.jp/brazil/portuguese/office)では詳しいプログラムを閲覧できる。

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