ホーム | 日系社会ニュース | デカセギ=製造業中心に求人が回復=在日求人誌広告56%増=「求職者足りない」の声=日系人は足踏み状態
「Alternativa」最新号の表紙
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デカセギ=製造業中心に求人が回復=在日求人誌広告56%増=「求職者足りない」の声=日系人は足踏み状態

 日本のゆるやかな景気回復に伴い、外国人労働者の求人が増えている。在日ブラジル人向け求人情報誌『Alternativa』で求人広告を掲載した「企業数」(ページ数)はそれぞれ、2013年の半ばまでは80社(30ページ前後)を推移していたが、同年8月頃から増加に転じて今年10月で125社(52ページ)まで増え、会社数で56%増となっている。当地派遣業者のM氏によれば「特に食品業界で人材が足りないと泣きついてくる」という状況だ。給与など条件の良し悪しや将来の展望、親の介護など様々な要因により足踏みしている日系人が多いようだ。

 日本の厚生労働省の統計によれば、今年1月の時点における外国人労働者数は71万7504人で、前年比5・1%増加。2007年に届出が義務化されて以来、初めて70万人を超えた。外国人技能実習制度の実習生増加を初め、留学生の受入促進、雇用情勢の改善が主な要因のようだ。
 「弁当屋やパン屋など食品関係は常に就職口があるが、日本では人が集まらない。オートペッサ(車の部品)など製造業全般、仕事はある」と冒頭のM氏。求人が増えてきたのは今年の初め頃からで「去年に比べたら倍、一昨年だったら3倍くらい。ブラジルが悪くなってきたから、行く人が増えた。特に多いのは三世」と言う。それでも求人に対し、求職者が圧倒的に足りないという。
 CIATE(国外就労者情報援護センター)で扱う求人情報に大きな変化はないが、大嶽達哉専務理事も「求人は増えているが求職者が少ないと聞いている」と語る。
 「ブラジルには高い給与水準を求める人が多いが、日本では給与を上げてまで募集する会社はまだ少ない。以前のように派遣業者におんぶに抱っこでビザや住宅の手配、渡航費の前借りまでしてもらえないからでは」と推測する。
 「あくまで個人的な印象」と前置きしながらも、若い世代は日本行きに関心あるが将来の展望が開けない、40~50代は親の介護など家族の問題がある、60代は求人がないなどの理由で踏みとどまっているのではと話した。デカセギ経験者の情報により、日本での生活に否定的印象があることも一因という。
 しかし、中には「求人、求職ともに増えている」と語る業者も。15年の実績を持つ派遣業者「イチバン」では、「テレビや雑誌で宣伝もしているし、訪日後のサポートも手厚くしているので、求職者には困っていない。給与も上がっている」との状況だった。
 ビザの取得代行・派遣業者の紹介を行う「お仕事ドットコム」のコリ・パッソスさんは、「求人は確実に増えているので、派遣業者が手数料などコストを下げれば行きたい人はたくさんいるのでは。帰国支援を受けた日系人の再入国が解禁された事実を知らない人も多い」と話した。
 まずは日本国内の外国人失業者、次に当地から呼ぶという順番のせいか、在日ブラジル人向け求人誌の広告増加率ほど、当地では増えていないようだ。

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