樹海

 本紙編集部の若手記者で魚介類が苦手だというのに、夢に海老や蛸がでるほど、セビーチェを食べたというペルー料理店へ。知人を誘うと「えっセントロの?行きたいと思ってたんだよね~。でも人気で並ぶらしいよ」というので、早速電話で予約。完全にスペイン語での対応だったので、本場の味に期待に胸が膨らんだ▼ペルー料理は、実はかなりやる。食材の豊富さは市場に行けば分かるし、唐辛子やジャガイモの原産地でもあり、その種類と味の多彩さは十分主役を張るほどだ。ガストン・アクリオ氏など、世界的に有名なカリスマシェフもいる。やはり歴史のある国に美食は栄えるものだ▼メニューは大きく分けると4つ。セビーチェ、揚げ物、スープ、それと中華系料理だ。セビーチェは味も鮮度も良いが、なにをさておき値段が安い。リマに本店があるサンパウロ市の某専門店と比べものにならない料金設定。スープの味も独特でなんと表現していいのか。「スープは経験」というが、インカの悠久を感じさせる深みだ▼中華系というのは、タジャリンというスパゲッティを使った醤油焼きそばとチャウファと呼ばれる焼き飯だ。前者を食べたが、独身の男やもめが作ってくれた料理なら分かるが…という代物。ただこれをペルー料理と推してくるところが興味深い。そういえば、道端で中国人が鍋をふるうヤキソバはスパゲッティだ▼ただ、パパ・レジェーナやアンティクーチョ、アヒ・デ・ガジーナなど代表選手がいない。クスコ出身の店員に軽く苦情をいうと、「ここはリマの料理。本物のペルー料理はアンデスだよ」との言葉にニヤリとした。(剛)

image_print