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第16回 ブラジルで営業するということは…

 ブラジルに進出している日本企業の多くは、営業に苦労している。国土が日本の約23倍あるブラジルは日本と勝手が全然違い、全国行脚の営業など簡単には出来ない。その分、営業の人数を増やすと言っても、人件費および雇用リスクの高いブラジルでは難しい。
 工場に商品を売り込むとしても、一軒一軒がすごく離れているので、1日に1、2カ所しか行けない。それでも日本企業は、額に汗して足を使って営業することを良しとする会社が多く、担当から徐々に決裁者にたどり着こうとする。しかし、この営業方法では、残念ながらブラジルでは実績は上がらない。
 ブラジルと日本の営業現場、商習慣、市場環境は大きく異なる。まず、日本や他の先進国の業界では知名度があったとしても、ブラジルではほとんど知られていない日本企業が多い。コツコツと一軒ずつ回ると言っても、ブラジルの場合多くは会ってももらえない。そうすると、どうしても同じ日本からの進出企業の顧客のところへ行く回数が多くなる。
 会ってはくれるし、それなりに日本企業同士買ってくれようとはするが、キャパシティは限られているので、そんなに大きな売上げにならない。顧客自体もブラジルでのビジネスに苦戦しているところが多いからだ。
 ただ、営業していることは確かであるし、多少売上げも上がる。時々食事をしたり、休日を一緒に過ごしたりしているうちに、時間が過ぎて、駐在期間も終わる。
 さらにブラジル市場のハードルが高いのは、展示会に出展して名刺交換をしたりして、たとえ担当者にたどり着いたとしても、商習慣として日本ではない個人的キックバックを求められる。多くの日本企業の場合、これは受け入れられない。
 しかし、政治家から国営企業幹部、そして多くの諸先輩や同僚がしているのを見てきているので、誰もが当然だと思っており、これを受け入れないと仕入れ先をスイッチしてもらえない。きちんとした会社で、そういうことに組しない企業に行き当たったとしても、今度は価格競争になるので、地元企業や欧米企業に適わなくて結局採用に至らないこともある。
 また、工業製品や工場設備は、日本や欧米の20年前で止まっているような状況で、ほとんど設備投資をしていない会社が多く、最新の先端商品を売ろうとしても、それを買う(=必要としている)会社が少ない。
 多くの業界では、中小企業が潰れ、寡占化しており、上位の会社が大きく稼いでいるのがブラジル市場の特徴である。どんなに足を使って、中小企業を回っても、大きな売上げにならない。いかにトップ3に食い込むかが、ブラジル営業の要諦である。そこで必要なのが人脈であり、コネクションだ。
 ある自動車部品メーカーは、開拓をしたい欧米自動車メーカーごとに違う営業のコンサルタントを雇い、新規市場開拓に成果を上げている。ブラジルで大きな業績を上げている総合商社も長年同じ人が中南米を担当するのはそのためだ。最初にマネジメント層に食い込めば、前段のキックバックは関係ない話になるケースが多い。現場の営業は、現地採用の営業担当に任せ、マネジャーは自身の市場を良く見極め、商品がマッチングするトップ3にターゲットを定め、そこのマネジメントとのルートづくりが最も重要な営業活動である。

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