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『一粒の米もし死なずば』
『一粒の米もし死なずば』 A5判・219頁 定価1900円+税

ニッケイ新聞の本『一粒の米もし死なずば』紹介

注文は無明舎まで
http://www.mumyosha.co.jp/docs/14new/hitotubu.html

日本で出された主な書評や紹介記事

《〝面白い〟というと語弊があるかもしれないが、出来の悪い推理小説よりもはるかに刺激的で、歴史上のナゾを解き明かしながら連鎖的に叙述が繋がっている歴史物語となっている》『ブラジル特報』2015年1月号

《外国への関心が薄れて、閉鎖的にさえ感じる現在の日本で、100年も前に日本の外に目を向けて奔走した人たちの歴史を綴ったこの1冊は、特に教育現場でも活用して欲しいと思えるものだ》『ラティーナ』2015年1月号

《レジストロ地方に入植した日本人とその子孫たちの生き方を、時代と重ねて丹念に追った貴重な労作だ》中日新聞2015年1月6日付

《ブラジル・南米研究者、移住者の関係者が移住の全貌を見る上で、特に、資料文献を探すのには最適の労作だ》日本農業新聞2015年1月25日付

《波乱万丈の苦闘の歴史とその百年後の到達点までの気骨ある明治の日本人南米移民史の舞台裏に迫る労作》『ラテンアメリカ時報』2014/15年冬号

《ブラジルの小さな町に、明治の日本人が始めた大きな物語が眠っている》『産直コペル』2015年1月号

《南米に根を張った、気骨ある明治人達の活躍に迫る》『O Brasil』966号、日伯協会

《連中戦後の苦闘までたどる邦字紙連載の書籍化》静岡新聞2014年12月21日付

 ブラジルといえば誰もが「コーヒー」と連想する世界最大のコーヒー豆生産国において、日本人が戦後〝紅茶の都〟レジストロを築いたことは隠された歴史だ。
 アマゾン河口のトメアスー移住地が胡椒生産を実現して〝胡椒の都〟に、やはりアマゾン河中流のパリンチンスで高拓生が不可能と云われていたジュート(黄麻)生産に挑みそれまで輸入に頼っていたコーヒー豆袋を国産化した歴史もある。さらに、今もサンパウロ州バストスでは州内の卵生産の4割を独占しているなど、日本移民がブラジル建国に果たしてきた貢献の一端が農業界にははっきりと表れている。
 その一つ、レジストロ地方の百年間にわたる歴史を記したのが『一粒の米もし死なずば』(無明舎、2014年)だ。ニッケイ新聞が同地入植百周年(2013年)を記念して127回連載した内容を一冊にまとめた。
 「レジストロ」という地名を知っている日本の日本人は、今はもう、ほとんどいない。
 だが、戦前にはブラジル移住を語る上での代表的な〝花形〟日本人集団地として、移住関係の雑誌はもちろん一般紙各紙でも記事が繰り返し掲載された。日露戦争に勝利した時の桂太郎総理大臣、大浦兼武内務大臣、高橋是清日銀総裁、〝日本の資本主義の父〟渋沢栄一ら錚々たる面々が、理想に燃えてブラジル移植民に日本の将来の一端を賭けようとした場所だ。
 日本で多文化共生が叫ばれるようになる遥か昔から、ブラジルの日本人集団地ではそれが日常だった。それなくして生活すら不可能だった。移民には日本の地方農家の次男三男の家庭が多く、いわば普通の庶民がいきなり外国生活を始めた。言葉や文化、気候や気質の違いはもちろん、そこに至るまでの道のりはけっして楽なものではなかった。
 生存者から貴重な証言を集め、文献を探し歩く中で見えてきたものとは何か。ブラジル在住者すら知らなかった数々の歴史が、この本には収められている。
 ダイナミックなブラジルの歴史の中で、翻弄されながらも基盤を築いてきた日本移民の姿を知る絶好の一冊。

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