ホーム | 日系社会ニュース | ピラール農畜産展=新マスカット人気急上昇=文協、日語校が力強く後押し=同小粒種も半額で好評
大粒で種ナシ、甘みもしっかりあるピラール・マスカットを手にする農業技師の増永セルジオさん
大粒で種ナシ、甘みもしっかりあるピラール・マスカットを手にする農業技師の増永セルジオさん

ピラール農畜産展=新マスカット人気急上昇=文協、日語校が力強く後押し=同小粒種も半額で好評

 3月5日から8日までサンパウロ州ピラール・ド・スール市で、第19回農畜産展が行われた。会場内のパウリスタ柿生産者協会(APPC)の展示ブースには、カキ、ライム、キウィ、パイナップル、ぶどう、マスカットを始めとする同地直産の果物が展示販売され、訪れた人の目を惹いていた。今年の目玉は粒が大きくて種がなく、皮も丸ごと食べられ、糖度が高いと評判の同地特産ピラール・マスカット。店頭なら小売価格500グラム40~50レアルのところ、会場では格安の20レアルで販売されていた。

岡村正美ピラール文協会長(後列左から2人目)日本語学校教師の渡辺久洋さん(同右端)をはじめとするみなさん

岡村正美ピラール文協会長(後列左から2人目)日本語学校教師の渡辺久洋さん(同右端)をはじめとするみなさん


 開発に携わったAPPC農業技師の増永セルジオさん(47、三世)は、ピラールにしかない特別なマスカット誕生の秘密をこう語る。
 「6、7年前に元々あったイタリア品種から特に味のよい、甘いブドウを選別して品種改良を重ねた。糖度が高く、皮が食べやすく、食感がシャキシャキしている上に、種ができない技術を加えて今のピラール・マスカットができた」
 増永さんは2005年4月から1年間、山梨県果樹試験所でぶどう作りを学び、帰伯以来APPCの農業技師として活躍している。
 APPCの決めた基準に従い糖度を厳しく管理されており、18度以上ないと「ピラール・マスカット」名で出荷できない決まりがある。
 「食べやすいように、種ナシにする技術だけならば、そんなに難しいことではないが、種を抜くとどうしても甘みが落ちがち。種を抜いていかに甘みを保つかが鍵。根の周辺に水があたりすぎると糖度が落ちるので、屋根やシートをかけたり、虫や鳥から守るためにぶどうの房全体を紙の袋で覆ったりしている」との工夫を語る。
 「ピラール・マスカット」は出荷数が多くないために価格が上がってしまう。同じ糖度で種ナシだが、粒が小さい「マスカチーニョ」という商品の生産も行っており、農産展では500グラム10レアルで販売されていた。「味は同じで見た目が少し違うだけ。それで値段が半額だから好評」とのこと。
 また同地文協は日本語教育が活発なことでも知られており、農畜産展の飲食、休憩スペースでは、日本語学校に通う日系の子供達が給仕に励んでいた。
 日本語学校教師の渡辺久洋さん(40、大阪)は「本来12歳以上の上級生がやる仕事だが、上の子をみて下級生の子達が真似してやりたがる」と語り、岡村正美文協会長(70、鳥取)も「ピラール・ド・スール市主催と言っても現地文協の力があってこそ、この農畜産展も盛り上がる」とは述べた。
 同農畜産展では他にも遊園地、セルタネージョショー、和太鼓ショーなどが行われ、多くの一般市民が訪れていた。

【大耳小耳コラム】

 プリプリ肉厚であまーいピラール・マスカット。サンパウロ市カンポ・ベロ区のスーパー「ナチュラル・ダ・テッラ」に立ち寄ったら、1キロ約50レアルで販売していた。値段は張るが、確かに一度食べたら二度食べたい味。APPCのサイトによれば、サンパウロ市内は中央市場、サンタ・ルジア、オバ、ポン・デ・アスーカルなどで扱っている。詳細はサイト(fruticultoresassociados.blogspot.com.br)で「onde encontrar」と検索すれば見つかる。

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