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第26回 日本企業のブラジル撤退はブラジルのせいか?(追記)

 掲題コラムは3回で終了予定であったが、もう一つ大きな課題を取り上げるのを忘れていたので、今回追記をしたい。それは、財務戦略である。財務は、ある意味ブラジルでの経営の生命線であり、企業が途中で躓く起点となっていることも多い。根本的にブラジル財務に関して日本企業の本社は以下の3つの点で勘違いをしている。1)ブラジルはリスクが高い国なので、一度に大きな投資をせず、少しずつ投資をしていくのが良い。2)ブラジルの税制は複雑で良く変わるので、我々の手に負えないので大手の会計事務所に任せていれば安心。3)ブラジルは物価も高く、税金も高いので、利益が出せない。
 一番目のリスクがあるから少額投資は、まさに今のブラジルではあり得ない。25年前のハイパーインフレの時代の悪い記憶が未だにあるようだが、今はブラジルの銀行は盤石であるし、日本の銀行の支店もある。ブラジル企業も大きく資本金を積んだ会社は信用するため、ビジネスもし易いし、定期預金に積んでおけば今であれば年利が10%近く付く。少額投資では、政府からのインセンティブも得られず、銀行の金利もわずかで、ブラジルコストによりどんどん口座残金は減っていく。また、日本には「うちの会社は財テクなどしない。額に汗して稼ぐんだ」と言う会社もあるが、これも大きな勘違い。金融引き締めで現政権がどんどんと公定歩合を上げていった結果、すでに12%を越えており、もし金融資産を持っていれば、不景気時や問題が起こった際に売上減を埋められるわけで、いざという時のための保険でもある。かつ高いブラジルコストや税金を補うためのツールであり、経営戦略の重要な一部である。欧米や韓国企業がこれを駆使して戦っている時に、日本企業だけは定期的に増資の申請をするために莫大な時間=お金を使って、提案や稟議を書き、日本に行って説明をしている。
 日本企業のブラジル支社幹部は大抵赴任前に財務や税務に携わったことがなく、経営に関しても教育を受けていない。また同時に本社サイドも、まさかブラジルのような新興国で、複雑に編み上げた税制と水も漏らさない天網恢々な徴税の仕組みを持っているとは思っていない。駐在員は技術、営業、マーケティングが中心となり、当然他の進出国と同様、経理・財務は現地任せで、年に1―2回本社の経理・財務部門が監査で訪問する程度である。ここで2番目の現地会計士の出番となるが、ブラジルの税制の難しさと改変の早さは、彼らの能力を遥かに越えている。そのことに気づかない本社は金融の専門ではない現地駐在員と会計士に任せっきりになっているが、ブラジルは罰金などの額も大きく、法律の変更も含め、本社の財務や支社の経営陣が経理・財務の数字を常にチェックをする必要がある。
 そして最後は前にも本稿で記したように、ブラジルは税金も高い、労務費も高い、あらゆるコストが高いが、きちっと投資をして経営とマーケティングを行えば、利益もしっかり取れる国である。
 結局、大きな資本金を積まないから、有効なマーケティングやコストダウンが出来なくて、結果として商売も大きくならず、利益も上がらなくなっている。この3つの認識を本社サイドが改めなければ撤退の可能性が高まってしまうだろう。(輿石信男・株式会社クォンタム代表取締役、ニッケイ新聞東京支社長)

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