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鈴木ゆうこさん
鈴木ゆうこさん

『World Fashion』編集長=鈴木ゆうこさんが講演=ブラジル繊維業界の変遷語る=J―ファッション協会主催

 アパレル・繊維産業の業界向け情報誌『World Fashion + Varejo』を創刊し、20年間編集長を務める鈴木ゆうこさん(62、三重)が、16日に三重県人会会館で業界の仕組みについて講演会を行った。日本ファッション文化の普及を目指すブラジル・Jーファッション協会(佐藤クリスチアーニ会長)主催。業界で広報・マーケティングに携わって40年、伯ファッション織物工業連合会(UNIT)で10年間マーケティングを担当した、知る人ぞ知る重鎮だ。業界で活躍する若手の非日系ら約20人が参加し、耳を傾けた。

 同情報誌は1996年頃に二人の女性共同経営者と創刊、年に4回、3万部を発行する。76年に独系旧総合化学会社ヘキストに入社し業界に参入して以来、業界の成長と共に歩んできた。盛衰の激しい世界で生き残れたのは「UNITのような有名な連合会で働き、私の広報・マーケティングへの信頼を得たことが大きい」と語る。
 講演では、繊維が出来るまでの仕組みや業界の変遷を1時間にわたって解説。近年の動向の一つに環境への配慮をあげ、「動物性繊維がどんどん人工繊維に置き換わっている。今の人工繊維は昔と違って質が良く、全体の生産量の56%に達した」と説明した。
 また各季節の流行は、従来ならランウェイ(ファッションショーでモデルが歩く通路)のコレクションが決定していた、今ではテレビドラマの登場人物の服装が大きく影響するという。「最近は有名ブロガーに宣伝をさせることも多い。ネットのおかげで情報が瞬時に伝わるようになり、ランウェイに登場した服も、すぐに商品化しておかないと販売が間に合わない」と流行変化の早さを強調した。
 質疑応答では、参加者から「今は中高齢者層が人口の半数以上を占めるのに、この年齢層の体型に合った服がほとんどない」といった指摘もあった。鈴木さんは「日本と違って、ブラジルでは地域ごとに人の体型が違うため、規格を標準化しにくい」と当地ならではの特徴を分析した。ちなみに「私の場合は日本の方が身にあった服を見つけやすい」とも。
 「日本語は苦手」という彼女は、57年に4歳で渡伯した子ども移民だ。50年に日本で発売された化粧用クリーム「マダムジュジュ」の売り込みのため、父のテツヤさんが南米移住したことによる。南米の街を訪ね歩きサンパウロ市に腰を据えると、日本製化粧品の輸入販売を手がけた。
 本紙の取材に、「父は18歳で日本を出、インドネシアでデパートを開いたような人。あまり日系社会とは繫がりがなく、私もそういう性質を受け継いだ。日本人でもブラジル人でもないと思い悩んだ時もあったけど、もうそれも過ぎたこと」と振り返った。
 そして、講演の最後に「人の目を気にせず、自分らしい着方ができればすばらしい」と会場の若手を激励した。


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 プロ向けアパレル情報誌『ワールド・ファッション』編集長を務める鈴木ゆうこさんの父テツヤさん。戦前にはインドネシアのジャワでデパートを経営していたが、第2次大戦で兵役に就くためにデパートを売り払い、9年間戦場に赴いていたという。終戦後、昔の人脈を通して婦人用クリーム「マダムジュジュ」販売代行を持ちかけられ、南米進出に乗り出した。化粧品事業から手を引いた後はリベルダーデ区で盆栽売りに専念し、その界隈では結構有名だったとか。

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