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「全て事実。後悔している」=デカセギ二人組殺人事件=被告一人が供述、犯行認める=代理処罰申請6件目に進展

 【既報関連】東京都葛飾区で2001年6月4日未明、日系人の男二人が暴力団員に雇われ、無職の川上芳考さん(よしたか、当時33)を、自宅に押し入り拳銃で射殺し、妻に重傷を負わせたとされる事件の被告人尋問が5月25日午後2時半頃、サンパウロ市のバーラ・フンダ刑事裁判所で行われた。被告二人はデカセギで訪日していた日系三世で、犯行の約2週間後に同じ便で帰伯していた。日本政府は10年に代理処罰申請(国外犯処罰規定による訴追)をし、マルセーロ・フクダ(35)被告は翌年に当地で逮捕され、サンパウロ市ベレンの刑務所に拘禁されている。今回は彼のみが出頭、約一時間にわたって供述を行い、「後悔している。冷酷で残虐な行為だった」とのべ、公訴事実を全面的に認めた。

 「やったことは全て間違っていた。後悔している。事件後は、全然人生がうまくいかなかった」―。被告人尋問は報道陣にも公開する形で行われ、手錠で繋がれた状態で警官に同行され、同被告が出廷した。「罪を犯したことを後悔しているか」との検察官の問いに早口でこう答え、反省の意思を見せた。
 最初に裁判官が黙秘権について説明した後、公訴事実を述べた上で事実かどうかを尋ねると、「全て本当です」と答え、判事、検察官の質問に、よどみのない口調で答え始めた。
 供述によれば、フクダ被告は事件当日未明、顔見知りだったデニス(=証人の一人デニス・ユウジ・ヒロタ)という男に誘われ、行きつけだった成田のディスコに、もう一人の犯人クリスチアーノ・イトウとともに出かけたという。ディスコで二人は、大柄の男をデニスから紹介された。「その男に、幾許かの金と引き換えに仕事をやらないかと提案された」。提案された報酬は、一人100万円ずつだった。
 被告二人はその夜、男から現金50万円と共に白い車と銃を受け取り、デニスの運転する車で被害者宅に向かい、近くのレストランで、男から指示があるまで待機した。
 その後川上さんの家に行き、イトウが家の外から最初の一発を撃って侵入したが、その時に銃の挿弾子(複数個の弾薬を装填する際に用いる器具)が外れた。後から家に侵入したフクダ被告が、落ちていた弾を見つけて引き金にセットし、二発目を被害者に向けて撃った。
 イトウは川上さんの妻に暴力を振るい、その後二人は現場から逃げた。残りの50万円は、犯行二日後に現金で受け取った。フクダは事件翌日、仕事を無断欠勤し、クビになったという。
 被告二人は日本で、勤務していたソニーの工場で知り合い、一年ほど一緒に住んでいた。
 暴力団との関係について問われると、「依頼人がヤクザだったかどうかは(そう言われてはいるが)、よくわからない。自分も、知っている限りではクリスチアーノも、一度も暴力団に所属したことはない。(イトウの)刺青も、ヤクザのものではない」と断言した。帰国するための航空券は、用意されたのではなく、自分で購入したという。
 日本には犯行までに一年半ほど滞在していたが、フクダ被告はほとんど日本語を話せなかった。犯行に及んだ動機は「残念ながら金だった」と答えた。被害者のことは知らなかったという。
 フクダ被告には二人子供がおり、帰国後、カンピーナスで清掃員などとして働いていた。同被告の証言によると2004年、薬物の取引に携わった疑いで逮捕され、有罪判決が出ている。


イトウ被告手違いで出廷せず=殺人依頼者は日本で無期懲役

 被告人尋問は、二人に対して同時に行われる予定だったが、25日の尋問に出廷しなかったイトウ被告は、サンパウロ州アンドラジーナの刑務所に移送されており、同被告の尋問は8月11日に予定されている。
 イトウ被告が出廷しなかった理由を、閉廷後に取材に応じたイトウ被告のヴァンデルレイ・ダ・シルバ弁護士は、「移送先の刑務所に、今日尋問があるという情報が伝わっていなかった。裁判官も今日初めて(移送を)知ったと聞いた」と説明した。「(訴訟の進行が)またこれで遅れた」と肩をすくめた。
 「30年検察官をやっているが、ここまで詳細に、明確に供述をした被告は珍しい。事実を否認すると思っていたので、驚いた」。ジョゼ・カルロス・コセンゾ検察官はメディアの取材にこう答え、「おそらく、良心の呵責に長年悩まされていたのだと思う」との見解をのべた。
 今後の訴訟の進行については、「イトウにはもう逃げ道がない。フクダがここまで細かく供述した上で罪を認めたのだから、陪審裁判は確実。証拠もある」と話した。
 ただし手続き上は、イトウ被告の尋問終了後、裁判官が陪審裁判を行うか否かを決定し、陪審裁判が決定した場合、被告側から反論がなければ、公判期日が指定される。また、証人3人の尋問も残っている。
 共同通信によれば、この事件では川上さんの殺害を依頼したとして殺人罪などに問われた双子の弟・池辺哲守(いけべ・てつお)受刑者の無期懲役が確定しており、暴力団組員ら計7人が逮捕されている。
 フクダ被告は、この事件に関わった人物として他のブラジル人の存在を挙げたが、本名は知らないといい、「pedrinho」「cachorro」という通称で呼ばれていたと証言した。pedrinhoと呼ばれた男は「捕まっているのでは」と答えた。
 また、「この犯罪の仲介人だった」と説明したデニスという男については、「ブラジルにはいないと思う。事件後に大分経ってから日本で捕まったはず」と話した。

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