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第30回 リオで日本語を学ぶ未来のシンパ

 リオデジャネイロで、日本語を学んでいる十数名のブラジル人と会って話す機会があった。年齢的には22歳から28歳ぐらいの若者で、すべて非日系人である。さらに7割がリオデジャネイロ連邦大学か州立大学の学生だった。
 ほとんどの人たちが、日本語を学ぼうと思った最初のきっかけはやはりテレビのアニメで、そこから個々それぞれ、日本の音楽に興味を持ったり、文学に関心を深めたりしている。今もマンガやアニメにハマっているという人はほとんどなく、どちらかというと、日本語を勉強する教材に使っているぐらいだ。
 彼らと話をしていて、いくつか驚いたり、感心したことがあった。ブラジルも日本とほぼ同じでストレートに大学を卒業すると22、23歳であるが、ほとんどの人の年齢が24歳から26歳で大学3、4年生だったので、てっきり留学をしたか、何か仕事をしていて休学をしたのかと思い、なぜなのかを聞いたところ、驚くべき回答が返ってきた。
 何と今も多発している大学教師たちのストライキによって、大学が何度も休講になり、結局彼らの単位が足りず、強制的に留年になっているのである。ブラジルの場合、州立大学や連邦大学は学費が無料なので、大学側も政府もあまり気にせず、簡単に留年させるようだ。
 さらに昨年はW杯があり、リオは1ヶ月間大学も休みになったこともあり、日数が足りなくなったとのこと。現在の安すぎる教師の給与や、悪すぎる待遇などの改善を求めてのデモであるが、汚職まみれの政治と地方自治体の財政難のしわ寄せがこんなところにまで出ており、この若者たちはまさに被害者と言える。
 自分の先生たちのストライキをどう思っているかを聞いたところ、彼らも将来日本語の教師になりたい人が多く、そうなると大学で同じ立場になることから、待遇改善は他人事ではなく、先生たちに対するシンパシーが強いため、やむをえない、もしくは応援する気持ちが強いようだ。
 次に日本語学習者と言っても、いろんな学びの形があることを知った。例えば、両親が航空会社で国際線のキャビンアテンダントをしているニテロイに住む青年は、十数歳の元旦にビーチで遊んだ後に家に帰ったら、おそらく親が日本で入手した『365日の漢字』という漢字学習本が置いてあるのを見つけて運命を感じ、その日から1日1漢字を勉強したそうだ。
 会話は決して流暢ではない彼だが、手元にあった日本語の書籍を見せてタイトルを読んでもらったところ、『天皇と原爆』などもスラスラと読んでしまってビックリした。また、ある女学生は日本文学が大好きで、現代作家では多くのブラジル人同様、村上春樹のファン。
 どこがいいのと聞くと「村上は村上だから」という日本のファンに聞いた時と同じ回答が返ってきた。村上以外に、谷崎潤一郎や芥川龍之介などの名前も出て来たが、彼女の一番のお気に入りは三島由紀夫。すべてが完璧とのことであった。
 私が会った多くの学生たちの当面の夢は、やはり日本への留学。リオはサンパウロと違い日系人も日本人も少ないため、彼らもネイティブの人と話す機会が本当に少なく、会話上達のためには日本に行くのが一番であることは明らかである。
 既に日本政府も、奨学金制度やいろいろな仕組みを作っていると思うが、あと一息で日本語がマスターできる彼らは未来の日本のシンパであり、日本側としても積極的に支援したいところだ。

輿石信男 Nobuo Koshiishi
 株式会社クォンタム 代表取締役。株式会社クォンタムは1991年より20年以上にわたり、日本・ブラジル間のマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ、各種認証取得支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。  2011年からはJTBコーポレートセールスと組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供と中小企業、自治体向けによりきめ細かい進出支援を行なっている。14年からはリオ五輪を視野にリオデジャネイロ事務所を開設。2大市場の営業代行からイベント企画、リオ五輪の各種サポートも行う。本社を東京に置き、ブラジル(サンパウロ、リオ)と中国(大連)に現地法人を有する。
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