ホーム | 日系社会ニュース | モジ文協敷地で立佞武多焼失=警察が出火原因を調査中=中山理事長「とにかく残念」=120周年の目玉の一つ
秋祭りで展示されたときの立佞武多の様子
秋祭りで展示されたときの立佞武多の様子

モジ文協敷地で立佞武多焼失=警察が出火原因を調査中=中山理事長「とにかく残念」=120周年の目玉の一つ

 モジ・ダス・クルーゼス文化協会の秋祭りのために貸し出されていた立佞武多が4日夜、祭り会場の同文協スポーツセンター内で焼失していたことが分かったと、17日付で時事や共同通信、NHKなど多くのメディアで報じられた。「日伯外交樹立120周年」の目玉として、2月14日にサンパウロ市カーニバルでパレードしたサンバチーム「アギア・デ・オウロ」のために日本から運搬され、サンバ会場を勇壮に行進した。その後、4月11日からの2週末に行われたモジ秋祭りに貸与され、同センターに保管されていた。

 東日本大震災の復興を願って作られた高さ14メートル余りの巨大な立佞武多「鹿嶋大明神と地震鯰」のブラジル移送のために、青森県五所川原市は市長や作業員19人の渡航費、国内輸送費として約2200万円の予算を組み実現した。五所川原市からアギアに寄贈され、インスチトゥート・パウロ・コバヤシ(IPK、小林ヴィットル代表)が実質的な管理をしていた。
 4日夜、火災に気づいたモジ文協職員が通報し、駆けつけた消防隊によりすぐに消火されたが、大部分が焼け、修復は難しい状況だという。幸い周囲に燃え移るようなものはなく、けが人もいなかった。
 同文協の中山喜代治理事長は「出火時、センターは完全に施錠されており、外部からの進入は考えにくい状況。現在警察が出火原因を調査中で、現場への立ち入りが禁止されている」と説明し、「詳しい状況を把握できていない。とにかく残念」とコメントした。本紙記者が現場近くまで行ったところ、焼けて骨組みだけの状態になっていた。
 立佞武多の移動には15台のトラックが必要で、約4万レアルの高額費用がかかるため、引き取り手がなく、秋祭り後も会場内に残されていた。モジ文協から小林氏へ返却する予定だったが具体的日程は決まっておらず、同文協管理下で保管されていた。
 IPKの小林代表は「立佞武多はカーニバル、秋祭りと期待以上の役割を果たしてくれた。今回の事故はとても遺憾に思うが、もともと『期間限定使用』の名目で許可を得て持ってきたもので、法的にはいずれ処分しなくてはいけなかった。修復のために費用をかけることは現実的ではない。残念だが、廃棄と言う形になる」と述べた。
 五所川原市とIPKとの連絡を仲介した在聖総領事館は「このような終わり方は残念。経緯は分からないが、放火や犯罪に巻き込まれたのであれば遺憾だ」とした。


焼失事件解説=処理法は当地側に一任=いずれは処分の運命に

 サンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス市で焼失した青森県五所川原市の立佞武多に関して、組み立てのために2月に来伯した折、制作者の福士裕朗さん(33、同市)は、次のような話をしていた。
 同市では8月の立佞武多祭りに向けて、20メートルを超える新作の山車が毎年作られる。祭りでお披露目された後は2年間、観光施設「立佞武多の館」での常設展示を経て、廃棄されるのが通例だという。
 今年のカーニバルに登場した立佞武多「鹿嶋大明神と地震鯰」は、11年東日本大震災の復興を願い12年5月に制作された。13~14年の展示期間を終え、役割を果たしていた。
 本来処分するところを当地の要望に応える形でブラジルに送られた。「一時輸入品」扱いとして通関したため、法律上は「日本へ返却する」か「処分する」必要があった。ただし、多額の費用をかけて日本に戻すことは非現実的なため、ブラジル側へ寄贈する形で制作者らは対処を一任していた。
 当地側としては、制作者に敬意を表して「役割を終えた」という儀式を行い、公に燃やすなどの処分をすべきだったとの声も。いずれ廃棄する方針だったとはいえ、突然の焼失という予想外の結末となった。

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