漫画家志望のファン多く=『るろうに剣心』和月さん講演=420人が熱心に耳傾け

 漫画家の和月伸宏さん(45、東京)と妻で小説家の黒碕薫さん(46、神奈川)の講演会が17日夜、サンパウロ市サンパウロ文化センターであり、420人が来場した(主催者発表)。国際交流基金サンパウロ日本文化センター(深沢陽所長)主催。代表作『るろうに剣心』(ブラジル版題名『SAMURAI X』)は、明治維新直後の日本で「不殺の誓い」を立てた元長州藩の暗殺者・緋村剣心の活躍を描いた剣劇漫画。累計発行部数5800万部以上を誇る人気作で、当地でも人気が高い。

 大歓声で迎えられた二人は、「日本の漫画がどうやってできるかを精一杯伝える」と挨拶し、仕事場や執筆道具、未完成原稿など40枚以上の写真を見せつつ、「シナリオ作り」を重視する独自の漫画制作法を話した。
 来場者からは、「(登場キャラクターの)斉藤一と四乃森蒼紫ではどちらが強いのか」「剣心は巴を斬ったことを忘れたのか」など、ファンならではの質問が相次いだ。
 また、漫画家志望のブラジル人からも質問が多くあり、「日本で漫画家になるにはどうすればいいのか」という質問に対し、「『るろうに剣心』が愛されているのは、日本人である作者が日本の事を書いたから。ブラジル人なら、日本人移民の苦闘を描いた大河漫画や世界一美味しいコーヒーのグルメ漫画を描けば良い。まだ小さいブラジルの漫画市場を広げるような人気作を作れば、日本の漫画業界が放っておかない。皆さんの武器は〃ブラジル〃です」と熱心にアドバイスを送った。
 講演後、『るろうに剣心』の大ファンで、主人公・緋村剣心のコスプレ姿で来場したクララさん(23)、マリナさん(20)のカンポス姉妹は「すごく面白かった。私たちは漫画も描いているのでとても参考になった。また来て欲しい」と満足した様子。
 和月さんは「漫画を描くという観点で質問をしてくる人が多くてビックリ」と驚いていた。
 国際交流基金の杉田尚央所長補佐は「参加者の反応も良かった。今後もアニメ・漫画の分野の講演者を呼べるよう努力していきたい」と手ごたえを語っていた。

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 「ブラジル人の陽気な性格には驚いた。暗くなりがちな自分の作品に陽気なキャラクターが登場するかも」―。『るろうに剣心』の作者、和月伸宏さんに対する「今回のブラジル訪問で、何かが作品に影響しますか?」という質問に対しての答えだ。和月さんと黒碕さんは約1週間の滞在中、リオやサントスを訪れ、帰国直前にはリベルダーデの移民史料館にも足を運んだという。次回作には是非日系ブラジル人キャラクターの登場を。