ペルーのナカダさん

 ちょうど10年前の2005年に起きた「広島小一女児殺害事件」を覚えている読者の方も多いだろう。いわゆる「あいりちゃん事件」で、広島市内のブラジル人集住地区で起こった。「ヤギ」という日本名を持っていたが非日系ペルー人で、本名を偽って就労ビザを取得し、前年に入国していた。自国で3件以上の未成年者へ婦女暴行事件を起こし、指名手配中。責任逃れか「悪魔が乗り移った」など話していた。なんともやりきれない事件だった▼その年に日本に来たペルー人ナカダ容疑者が、埼玉県で小学校の女児2人を含む6人を殺害した。逃亡中に負傷し、意識不明の重体だという。意味不明の言葉を話していたことで13日に警察署で事情聴取を受けていた最中に逃亡、その後14、16日と立て続けに事件を起こした▼ペルーの身元情報当局によれば、実兄がかつて6年間で25人を殺害し、同国史上最悪の無差殺人事件を起こしていたことが分かった。妄想型統合失調症と診断され、07年から医療刑務所に収監、「私は犯罪者ではなく、掃除人。社会から同性愛者とホームレスを駆除した。腐った世界をきれいにするために殺した」とテレビ取材に語ったという▼この兄の殺害現場をナカダが目撃したとの報道もあり、なんともグロテスクな様相を呈してきている。ナカダの姉は、「弟は普通だったのに、日本に行って病んでしまった」と話している。兄と比べれば誰でも普通だろう。なんでもナカダという名前は、日本国籍者と養子縁組したことで得たのだとか。デカセギブーム時代の商売だが、今ペルーにいるナカダさんは何を考えているか。(剛)