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戦争前後の日本移民迫害の歴史見直しを

熱心な質疑応答が行われた様子

熱心な質疑応答が行われた様子

 「ドゥトラ時代の警察はヴァルガスと同じ。だからかたっぱしから日本移民を捕まえて拷問してもおかしくない」。サンパウロ州真相究明委員会のアドリアーノ・ジョーゴ元委員長は「日本移民の歴史的正義に関する映画討論会」の質疑応答でそう述べ、「その時代の日本移民の歴史はもちろんだが、広島・長崎の原爆投下や沖縄戦など日本自体の戦争の歴史をポ語で出すべきだと思う」と付け加えた▼救済会元会長の吉岡黎明さんも「サントス強制立退き者をサンパウロ市で助けたドナ・マルガリーダ渡辺を映画化する話が出ている。彼女の存在はブラジル社会全体にとっても重要」と強調した。6500人もが立ち退きさせられ、サンパウロ市の移民収容所に一時送られた時、ドナ・マルガリーダが献身的に食事や防寒具の世話をした。彼女自身も警察に狙われた時期もあり、その中で支援活動を貫いた。まさに聖母といえる存在だ▼また山添源二さんも「ヴァルガス政権の迫害のせいで日系人は政府批判をしない〃沈黙の文化〃を持つようになったとの講演があったが、日本人は元々その種の素養も強かったと思う」と述べた。みな貴重な意見だ。このような討論会は大学内でなく、コロニアでこそやるべきだと痛感した▼調べれば調べるほど戦争中の話は残っていない。中には「寝た子を起こすな」「パンドラの箱を開けるな」と教示してくれる人もいるが、戦争中の歴史を掘り起こすことは移民史全体にとって重要なことだ。戦中の日本移民迫害に触れることなく勝ち負け抗争を語るのは手落ちと言われる時代がいずれくるに違いない。近日中に掘り起しの取り組みの一つ、連載『岸本昂一』を始めたい。(深)

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