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第49回 日本人が信じられないブラジルの不都合な真実 ⑨

 ブラジルの言語は、ポルトガル語である。大企業の役職以上の人であれば、多くは英語を話せるが、日常生活の現場では、ほとんどの場所で英語は通じない。ある意味、日本よりも通じないかも知れない。
 例えばデスクとか、チェアーなどの初歩的な言葉はもちろん、数字なども知らないことがある。英語とポルトガル語で似た単語も割とあるが、スペルが近くても意味がかなりかけ離れている言葉もあり、翻訳機やネット翻訳をそのまま使うと、とんでもない間違いになるケースもある。日本からの出張者が、あまりの英語の通じなさに愕然とするのも何度か見てきた。
 さらに不都合なことに、ポルトガル語は他のラテン語起源の言語と同様で、男性名詞、女性名詞から、複雑な時制・変化などがあり、ブラジル人でも正しい文法を使える人は限られるほど難しい。だから、歳をとってから学習するには、とてもつらい言語だ。
 また、口語と文語がまったく違い、文語の中でも、日本語に似て正式な文章には独特の表現がたくさん使われ、メール文、報告書、目上の方に対する書面、公式文書など、各々すべて使う言葉や表現が違ってくるらしい。私もまともに話すことや書くことは早々に諦めてしまった。
 さらに、ポルトガル語は主語を始め、省略して話す傾向があり、名前や機関名も俗称をそのまま使ったり、短縮して頭文字で呼ぶことも多い。多少会話がわかるようになったり、新聞が読めるようになっても、真意が理解できなかったり、逆の意味にとってしまうこともある。
 しかも、ブラジル人同士でも、解釈がマチマチの場合も多く、同じことを確認するのに3人ぐらいに聞かないと、真実に近づけないことも多い。ブラジル人はおまけに、おしゃべり大好き、ピアーダ(笑える小噺)大好きなので、世界でも有数のSNS大国だ。言葉に対するこだわりが強く、感性も鋭い。
 このようなポルトガル語とブラジル人の特性から、マーケティングの際にも、日本人の発想で行うとほとんどの場合に失敗する。ブラジルのマーケティングにおいては、所得の高い方から順にA/B/C/D/E層に分けて考えるのが一般的だが、階層が離れると使う言語・表現が違ってくる。例えばA層とD層では、響く言葉がまったく異なると考えた方がよい。
 さらには、国土が広いので地域の格差や多様な方言にも対応が必要となってくる。しかし、これがなかなか国土も狭く、所得・教育格差が小さい日本の人には理解してもらえない。グローバルで同じCMや広告を使おうとしたり、ネットを使った戦略もありきたりだったりする。ブラジル独自の展開が必要であることを、説明しても、ポルトガル語の複雑さやブラジル人の特性がなかなか理解されないため現状維持となってしまうことが多いようだ。
 と、このようにポルトガル語×ブラジル人の特性を一生懸命日本語で説明をしましたが伝わらないですよね? (つづく)

輿石信男 Nobuo Koshiishi
 株式会社クォンタム 代表取締役。株式会社クォンタムは1991年より20年以上にわたり、日本・ブラジル間のマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ、各種認証取得支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。  2011年からはJTBコーポレートセールスと組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供と中小企業、自治体向けによりきめ細かい進出支援を行なっている。14年からはリオ五輪を視野にリオデジャネイロ事務所を開設。2大市場の営業代行からイベント企画、リオ五輪の各種サポートも行う。本社を東京に置き、ブラジル(サンパウロ、リオ)と中国(大連)に現地法人を有する。

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