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ルシアナさん、パウロさん
ルシアナさん、パウロさん

【2016年移民の日特集号】伯国らしさ伝えるデザイン=日系三世が五輪マスコット作る=多人種、多文化の国を表現=コンペ参加の内幕を聞く

ヴィニシウス(左)とトム(右)

ヴィニシウス(左)とトム(右)

 リオ夏季五輪のマスコット、「ヴィニシウス」「トム」をデザインしたアニメ製作会社「バードスタジオ」は、日系人のエグチ・ルシアナさん(40、三世)、パウロ・ムペさんが聖市内で経営している。国内外で数々の受賞経歴を持ち、世界で最も創造性溢れるアニメーションスタジオの一つとして賞賛されている。そんなルシアナさんに、五輪マスコット制作の内幕を聞いた。

 「まさか優勝するとは思っていませんでした。最終審査の時、すでに私たちは出来ることをやり尽し、とても不安で、結果を知らされた時は言葉にならないほど最高の気分。まるでメダルを獲ったようでした」とルシアナさんは嬉しそうに思い出す。
 五輪マスコットの発表と共に「バードスタジオ」の名前は世界に知れ渡った。スタジオの知名度が高まっただけでなく、リオ五輪組織委員会が2014年11月に優勝者を発表した後、当時10人だった従業員が今では30人に増えたという。
 五輪マスコットのコンペ(デザイン競技会)開催は、広告代理店やアニメーションスタジオの間に一斉に知らせがあり、2013年末に参加を決めた。コンペには3回の審査があり、8カ月を要した。15社が参加し、最終審査に通ったのは3社のみ。優勝者とマスコットデザインは2014年の11月20日に発表された。

バードスタジオ内

バードスタジオ内

 「私たちはこのスタジオにアイデアを持ち寄り、何枚も何枚も描き、念入りにデザインを練り上げました。その制作の過程では楽しむことを忘れず、それが絵にも表れるようにしました。なぜなら私たちにとってブラジルは面白い国、それを表現したかったのです」
 何が「ブラジルの面白さ」か具体的に尋ねると、「特にサンパウロはそのことをよく表しています。日本人、イタリア人、アラブ人、ポルトガル人、黒人やインディオなど色んな文化、人種が混ざり合っているのです。私たちはそれが素晴らしいと考え、マスコットの姿にオリンピック、パラリンピックのアイデアと共に加えました」という。
 8カ月のコンペの間は、関係者以外には口外できず、こっそりと企画を進める必要があったという。「私たちが作ったマスコットの原案を大きく変えることなく、五輪委員会が目指していた方向を達成できたと思います」と答えた。
 最終審査にのこった3社のデザインを、五輪委員会とのやり取りの中で修整していき、最終的なものが完成した。
 「没になったデザイン案は公表出来ませんが、最終審査に通ったデザインと似ています。リオ五輪委員会はマスコットが五輪競技に相応しいものかどうかを心配していました。私たちは長い時間をかけて五輪のイメージ、委員会が提示する条件に近付けていきました。最終発表の際には十分仕上がっていました」と選考の過程を説明した。
 人気投票により昨年12月14日にブラジルを代表するボサノヴァ作曲家の名前が付けられたと発表された。実はスタジオ内では「オバ」と「エバ」が好まれていたとか。「もう投票で決まった名前に慣れたし、私たちはそのことについて話し合いません」と笑った。
 優勝が発表されたとき、好評価や批評など、とにかくたくさんの人から反応があり、コンペの大きさを実感したという。
 「私たちが想像していたよりも、はるかに大きなプロジェクトだったと分かりました。この感動が私たちの財産です。発表が終わり、日々の仕事の中でその時の感動は薄れていました。でも、五輪が近づくにつれマスコットを見る機会が増え、感動が甦っています。特に子どもの反応を見る良い機会で、たくさんのコメントを頂きました」
 どんな風にマスコットが使われるのか、8月5日の開会式について想像を膨らませている。「五輪開催地のリオ・デ・ジャネイロでは空港など、至る所でマスコットを目にする機会があり、五輪の空気を感じます。きっと開会式でマスコットを見る事で、これまで以上の感動を覚えるのではないのでしょうか」。
 最後にマスコットが伝えるメッセージについて聞くと、「このような混乱した時期でも人々、特に子供たちにマスコットから前向きなメッセージを受け取ってほしいと思います」とこれから一人歩きを始めるマスコットの活躍を期待する、ある意味、親のような心境だ。
   ☆   ☆  
 USPの建築学科を卒業したルシアナさんは2005年、パウロさんと共に2台のパソコン、1台のファックス機でバードスタジオを設立した。現在2人は演出家、取締役などとして同スタジオをまとめている。
 バードスタジオの作品は動画サイト「ユーチューブ」のスタッフおすすめ動画への選出、グーグルなど有名企業のCMの担当など国際的にも評価が高い。
 また、国内外のアニメ、アートイベントで講演するなどの活躍をしている。現在はカートゥーンネットワークで2017年に放送予定のバードスタジオ独自のアニメ「オズワルド」を製作している。

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