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7・31デモは種火状態

「モーロ、モーロ、モーロ!」と手を叩く聴衆

「モーロ、モーロ、モーロ!」と手を叩く聴衆

 「今は(サッカーの試合の)後半42分だ。ここで気を抜いてはいけない。ジウマは財政責任ではなく、刑事犯罪に問われ、刑務所に入るべきだ。ルーラもしかり。その日が来るまで、何度でも街頭に出て、圧力をかけなくては!」―反ルーラ/ジウマの急先鋒、過激な発言で知られる歴史家マルコ・アントニ・ヴィラがそう熱烈に演説すると、聴衆は「モーロ、モーロ、モーロ!」とラヴァ・ジャット作戦を指揮するセルジオ・モーロ判事の名前を大合唱して応えた。7月31日のパウリスタ大通り抗議行動の一場面だ▼有名女優レジナ・ドゥアルテも街宣車の上から《わたしはタダで来た!》と足代をもらって参加する親PT系のデモを批判し、《この罷免の機会を逃したら、もう後戻りできない。孫の代まで無茶苦茶な状態が続く。今ラヴァ・ジャット作戦を応援しよう》と呼びかけた▼いくつかの演説を聴いたが、反ルーラ/ジウマ/PT色が最も強く、大統領弾劾裁判を決着させることに力点を置く。続いてクーニャ前下院議長の罷免、そこから広がって汚職撲滅、議員特権の廃止、最高裁批判、「政党なき学校」運動(PT系人材が牛耳る公立学校が多いことを批判して〃政党色〃のない教育を!と訴える運動)などが中心。真面目で穏健な中産階級が主体だ▼不思議だったのは「五輪反対」と声高に叫んだり、プラカードを持つ人がいなかった点だ。大通りには100人以上の露天商が並んだと思われるが、五輪マーク付きの旗やTシャツ、土産品関係を売っている者はほぼいない。「サンパウロに五輪はない」との印象だ。コラム子は、カメロー(露天商)こそ世間の関心事のバロメーターだと思っている。彼らは主義主張と関係なし、合法・非合法関係なく、売れるものなら何でも売る。五輪開幕まで6日の時点で、サンパウロ州民の中産階級の関心事に五輪は入っていない▼Istoe電子版7月31日22時14分の記事に《罷免親派の抗議行動はスカスカ》との見出しが躍ったほど、参加者は多くなかった。とはいえ、写真にある通り、Vem Pra Rua(VPR)の街宣車の周りには数万人の聴衆が詰めかけた。今回はMBLとNas Ruasが同調せず、参加者が少なかった▼同Istoe誌電子版によれば、VPRのロジェリオ・シェケル代表は《参加者が少ないことは予想通り。多くの人が上院での罷免決議を見越している。我々の主たる目標はもはや罷免ではない。新しい過程に入っている》と議員特権廃止など10項目を訴えた▼1日から連邦議会が再開され、これからが罷免の最終段階だ。上院本会議の弾劾裁判で罷免されるには3分の2の賛成票が必要であり、予断は許されない。今回参加しなかったMBLなどは、上院の罷免決議の直前、8月中頃に行動する予定。同電子版でMBLの主要メンバーに一人は《我々はバラバラになった訳ではない。罷免決議に力を結集させるために、今回は自由参加にしただけ》とコメントしている▼今回のデモの参加者数は、「最低、不発」と言われた昨年12月のデモとほぼ同じ程度は集まっていたように感じられた。その12月の後、3月に120万人規模の超巨大デモが起きた。今回もいわば「アイドリング状態」(車のエンジンを点火しただけの状態)、「種火」状態だ。「罷免決議があやうい」などの状況になれば、瞬時にしてアクセルが踏まれ、「最大火力」の100万人規模になるだろう。(深)

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