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「18カ国は一つの大きな家族」と語るあかま総務副大臣
「18カ国は一つの大きな家族」と語るあかま総務副大臣

中南米の絆深めた新技術=日伯地デジ協力10周年記念=あかま副大臣「特別な信頼関係」

 「ISDB―T(日本方式)採用は中南米の絆を深めた」――30日午前、ブラジルTV放送技術協会(SET)が主催する中南米最大級の放送機器展「SET EXPO 2016」の開会式の中で「日伯地デジ協力10周年記念式典」が行なわれ、そんな声が各国代表から聞かれた。日本からあかま二郎総務副大臣、当地側はジルベルト・カサビ科学技術通信大臣が出席し、日本方式の地上デジタルTV放送を10年前にブラジルが世界で初採用したことから始まり、中南米の大半を占める13カ国、アジアを含めて計18カ国にまで広がった経緯を振り返り、絆の深化を誓った。


 06年にエリコ・コスタ通信大臣が日本方式に決定、07年12月2日にサンパウロ市で南米初デジタル放送が開始された。
 フェルナンド・ビッテンクルSET副会長は、日本方式採用までの険しい経緯を、「今でこそ、デジタル放送の優位性を疑うものはいない。でも06年当時、PAL―M方式をいじるにあたり、業界から反発はすごく、とてもポレミックだった。それをコスタ大臣がSETの選択を信じて踏み切ってくれた。その決断が無ければ、あと10年は迷っていたはず」と振り返った。
 06年当時のコスタ通信大臣も出席し、「全伯5500市で使える技術という敷居は高く、なおかつ全放送産業の機材を刷新する必要があり、業界の反発は強かった。当初コンベルソール(変換機)のチップの値段が80レアルもしたが、普及した今はわずか2レアルに下がった。当時は大変な賭けだった」と振り返った。
 当日はニカラグア、パラグアイ、グアテマラ、コスタリカ、エクアドル、アルゼンチン、チリ、ベネズエラからも大臣クラスの代表者が列席、中でもボリビアのマルコ・アントニオ次官は「この技術はラテンアメリカの標準となり、中南米の統合の大きな力になっている」と感謝した。
 あかま副大臣は式典の中で、「日本と中南米には特別な信頼関係がある。地デジは新たな架け橋。そのおかげでリオ五輪では素晴らしい映像が世界に発信された」とし、「18カ国は一つの大きな家族のようなもの。この家族の絆は8K技術などでさらに飛躍する。50年後に、この絆を結んでいて良かったと各国が思うような関係にしたい」と語りかけた。
 カサビ通信大臣は「ブラジルが誇る専門家が10年がかりで選んだ方式。この選択は正しかった。世界で最高のシステムであり、我々の関係を近づけてくれる。もっと友好国とこの技術を分かち合いたい」と語った。
 記者団の取材に対し、カサビ大臣は「スリナミやコロンビアにも働きかける。今後、この方式普及の焦点はアフリカになる」との見通しを語り、さらに「ブラジルでの8Kスーパーハイビジョン放送の実現を、東京五輪2020年頃までに目指す」と意気込んだ。


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 「日伯地デジ10周年式典」でビッテンクル副会長は、「SETが発足した94年当時は米国方式をまず試験した。99年には日本方式を含めた3方式に広げ、2000年の段階で日本方式が最良との報告書を国家電気通信庁(Anatel)に上げた。04年にルーラ政権が本格的に地デジ導入を決め、選択競争が再燃した」と振り返った。つまり最初、日本は本命ではなく米国や欧州方式が強く、SETが日本を強力に推薦した。どんなに技術が良くても、世界に広まるとは限らない。この種のシステム変更は政治の世界の判断だからだ。その点、コスタ通信大臣が元グローボTV局特派員も務めた放送業界に詳しい人物だったことが幸いした?!
      ◎
 同10周年式典で挨拶したNHKの森永公紀専務理事(技師長)は、日本では8月1日から衛星による8K試験放送を開始し、リオ五輪の映像を「まるで競技場にいるかのような興奮と感動を、日本全国54箇所のNHK放送局に設置した8Kテレビで多くの人々に体験」してもらったそう。東京五輪までに8Kテレビ受像機が普及すれば、超高画質な映像が一般家庭でも楽しめるようになる。日本でその日程ならブラジルはその次の五輪か?

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