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腰痛改善コラム=サムライの姿勢=メディカルトレーナー 伊藤和磨=(12)=「ギックリ腰にならない尻の使い方」

壁から一歩分はなれてたち、腰のそりを保ったまま、尻が壁につくように立つ様子

壁から一歩分はなれてたち、腰のそりを保ったまま、尻が壁につくように立つ様子

 物を持ち上げようとしたときに、ギックリ腰になってしまった経験はありませんか? ギックリ腰は、経験した人にしか分からない、辛さと情けなさがあります。「あんな思いは2度としたくない」と、経験者たちは語ります。
 あまりの痛さに、救急車を呼ぶ人もいます。
 私自身、サッカー選手だった時代に、6回もギックリ腰にやられて、その度、試合に出場するチャンスを逃してきました。どこの国でもゴールキーパーの練習は非常にハードで、「365日半殺し」というのが定番です。
 毎日何百回とセービング(横っ飛びしてボールに飛びつくこと)して、地面に落下するために、ほとんどのゴールキーパーが首や腰に爆弾を抱えています。
 しかし、私が6回ギックリ腰を経験したうちの5回は、練習中や試合中ではありませんでした。テーブルのコップに手を伸ばしたときや、靴を履こうとしているとき、軽いカバンを持ち上げようとしたときだったのです。
 「あんな過酷な練習に耐えられるのに、なぜ、こんな些細な事でギックリ腰を再発させてしまうのか?」
 これは、私が腰痛で引退するまで、ずっと悩み続けても答えが見つからなかった疑問です。
 実は、重たい物を持ち上げるときよりも、背中を丸めて手を伸ばしたときや、かがんだ状態から起き上がるときなどに、ギックリ腰を起こす可能性が高いのです。
 幸か不幸か、明確な答えと解決策が見つかったのは、選手を引退してからのことでした。

尻を使ってかがむ。持ち上げる

 その対策とは、「どんな時にも、出っ尻でかがんだり、しゃがんだりする」という事でした。腰の反りをキープしたまま出っ尻でかがめば、ギックリ腰を回避できるのです。このフォームは、重量挙げの選手と同じで、腰椎にかかるストレスを尻と太ももの裏側に分散してくれます。
 重量挙げの選手が、誰一人として腰を丸めた状態でバーベルを持ち上げないのは、それだけ腰部にかかる負担が大きくて危険だということです。
 私たちが知っておくべき大事なことは、出っ尻でかがまなければ、自分自身の頭と上半身の重さだけで腰を壊してしまうという事です。
 ハードトレーニングに耐えていながら、些細なことでギックリ腰を繰り返していたのは、私がそれを知らなかったからです。
 引退してからアメリカ人のトレーナーと出会い、尻を使ったかがみ方としゃがみ方を教わって以来、一度もギックリ腰にはなっていません。筋力を強化したわけでも、柔軟性が増したわけでもなく、尻=股関節を使ったかがみ方、しゃがみ方を覚えただけです。
 出っ尻にしてかがむことを「ヒップヒンジ」と呼びます。そして、ヒップヒンジで持ち上げることを「デッドリフト」と呼びます。この2つのことを無意識にできるようにするのが重要なのです。

「デッドリフト」

 デッドリフトを会得すれば、生涯、ギックリ腰の不安から解放されることでしょう。では、早速ギックリ腰にならない、持ち上げ方とかがみ方についてご説明します。

① バットウォール

 壁から1足分離れて立ちます。膝を少し曲げて、腰の反りをキープしたまま、尻が壁につくように突き出します。壁に尻がついたら、突き出した尻を元に戻して真っ直ぐに立ちます。(20回繰り返す)
 尻が壁についたときに、太ももの裏側が伸ばされている感じがあれば、適切に行えています。

② デッドリフト

 両足の間に物を置き、バットウォールと同じ要領でかがんでつかみます。突き出した尻を元の位置に戻して、真っ直ぐに立ちます。最も深くかがんだ位置で、太ももの裏側がストレッチされていれば、適切に行われています。かがむ前に鼻で息を吸い、動作中は呼吸を止めて立ち上がったときに口から息を吐きます。
 腰痛を治すのは薬でもメスでもありません。ヒップヒンジとデッドリフトのフォームを会得すれば、たいていの腰痛は改善されます。是非とも、実践してみてください。

【プロフィール】

プロフィール画像伊藤和磨(いとうかずま)1976年7月11日生まれ 東京都出身 

メ ディカルトレーナー。米国C.H.E.K institute 公認practitioner。2002年に「腰痛改善スタジオMaro’s」を開業。『腰痛はアタマで治す』(集英社)、『アゴを引けば体が変わる』 (光文社)など14冊を出版している。「生涯、腰痛にならない姿勢と体の使い方」を企業や学校などで講演している。

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