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《ブラジル》カラオケを通して伝わる日本の文化や生き様

 毎月最後の金曜日は、近くの日本人会の誕生会に参加する。カラオケのグループが一通り練習すると、その月生まれの人を紹介後、お祝いのパラベンスを歌い、持ち寄りで夕食を共にするのだ▼仕事帰りのため、パラベンスを歌うのに間に合わない事も多いが、夕食時のテーブルは色々な気づきの場にもなる▼2月24日は、向かい合わせて座った男性が、カラオケと日本の文化などに関する持論を聞かせてくれた。彼は会館のカラオケのメンバーではないが、人が歌うのを聞くのが好きだと言う。会館のメンバーが歌うのや、別の地区での頼母子で参加者が歌うのを聞くと、色々な思い出や感情が湧き上がり、温かい気持ちに満たされて帰路に着くという▼二世で日本語は余り話さない人でも、日本の歌を歌い、聞く時、親の祖国を思ったり、親兄弟と過ごした頃を思い出したりすると聞いた事があったが、この日の会話もそれと相通ずるものがあった。その男性は「日本の歌を聞くと心が温まって様々な感情に浸る」と語る一方で、「中国人や韓国人の二世や三世は祖国の言葉や文化をまだ色濃く残しているが、日系人は日本語や日本文化、生き様といった部分への意識が希薄になっている」と残念そうにつぶやいた▼歌謡曲や童謡、民謡などは、カラオケや盆踊りといった形で日系人社会を豊かにしてくれ、日本人としての感性や生き様を伝えるのに貢献している。日本人会や大会で会う非日系の人にも、歌を通して培われた日本語への興味や感性を感じる事が多い▼カラオケ歌手が技術や入賞の多寡だけでなく、歌に込められた心や背景にある文化などに思いを馳せてくれる事を改めて願わされた夜だった。(み)

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