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中前総領事、来月9日帰国=忘れようのない日系社会=「ルーツの種火をどう燃やすか」

帰国挨拶する中前総領事

帰国挨拶する中前総領事

 来月9日に2年の任期をおえて帰国する中前隆博在聖総領事(56、広島県)は16日夜、挨拶のため来社した。任期を振り返り、日系社会への感謝と今後の更なる日系社会の発展を願った。
 13年9月から在ブラジリア日本国大使館公使として勤務し、15年6月から総領事に。15年に日伯外交樹立120周年行事で秋篠宮同妃両殿下をお迎えしたほか、今年5月に開館した「ジャパン・ハウス」の安定立上げ等に尽力した。
 「伯国は日本との歴史的関係に誇りを持ち、日本文化を取り込むことに貪欲」と印象を語る。「普通の国なら信頼を築く所から始まるが、ここでは違う。既に信頼があった上で、何をするかという所から話が始められる」と言い、「他の国と次元が違う」と信頼を築き上げた日系社会への強い思いを滲ませた。
 107カ所の地方移住地を廻り、休日も日系社会の行事に精力的に出席し、その声に耳を傾けてきた。総領事は「過疎化で存亡の危機にある会館もあるが地方により事情は様々。だが日系人意識は脈々と根付いており、日語が消えてもポ語で誇りを発信しようとしている若者が沢山いる。コロニアが消滅していくという議論は違う」との見解をのべた。

 「地方の運営が難しくなるのは、都市化や高学歴化、高齢化などによる一般的な社会現象」とした上で、「新しい考えを持った人々が一味違う会館活動をしている例もあった」という。「日系社会が元気なところは外に打って出ている印象」と語った。
 「思い出深い地方」の一つに、歴代総領事として初訪問した南聖のラポウザ文協を挙げた。訪問に合わせ、街道から会館までの約10キロの道程を10世帯の会員で何カ月もかけて路面を均して出迎えたといい、「一役人にそこまでして頂けるなんて。感激で泣きたくなってしまった」と強く胸を打たれたようだ。
 安倍首相訪問以降に増枠された外務省研修生事業の応募を通じて、「日系人としてかっちりとした考えを持っている能力の高い若者が大勢いる。そこにいかに手が届いていなかったか」と気づきを得たという。「日系人として密かな誇りを抱いている種火をどのように燃やすのか。その若者の意識をつけるのに必要な機会を与えてあげることが重要だ」として、若手日系人や駐在員を集めた意見交換会などの機会を設けてきた。
 「日系社会の中枢は昔から20万人程度で変わっていない。その外縁には170万人もの人々が潜在力を発揮する場所を求めている。そこにどうやってテコ入れするか。まだ火をつけたばかり」と未練を残した。

 

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 中前総領事は、思い残すこととしてデカセギ子弟の教育問題を挙げた。「社会適合が上手くいかない若者が増えれば、日系社会への信頼も揺るぎかねない」とした上で、「もう少し何とかできないか。世論を喚起し、粘り強く認識形成してゆく必要がある」と今後を見通した。先月9日に提出された「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」報告書では、初めてデカセギ子弟の教育に触れた。「今後5年、10年とやっていくことになる、いい道筋を作れたのではないか」と期待を滲ませる。日系社会には「皆様にひいきにして頂いた。伯国は忘れようのない国になった」と語り、110周年に向けては「日系社会が一丸となって祝う体制を見せて頂き、若い人が主導できる場所を作って欲しい」とエールを送った。

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