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JH=年内オープンに暗雲漂う?=原氏がロンドン、ロスに言及=「立地が決まった」段階

講演を行った原氏

講演を行った原氏

 ジャパン・ハウス(JH)の総合プロデューサーを務める原研哉氏が16日、サンパウロ市のJHサンパウロで講演を行った。講演後、本紙の取材に答え、今後オープン予定のロンドンとロサンゼルスのJHについて構想を語った。両施設ともまだ「立地が決まった」段階で、「今年中にオープン」の目標は見直しが必要となる可能性が出てきたようだ。

 JHロンドンは同都市中心部のハイストリート・ケンジントンのエリアに建設される予定。周辺に「デザイン・ミュージアム」などの文化的、商業的施設が多く所在する。原氏は「日本のことを考えたことも無いような人が足を踏み入れることになると思う。設計・内装を担当するのはインテリアデザイナーの片山正通氏。サンパウロとは違った雰囲気になる」と期待を膨らませた。
 ロサンゼルスについては「立地はハリウッドのど真ん中。ロンドンで言えばピカデリー、日本で言えば秋葉原のような場所。観光で賑やかだが現地の人はあまり行かず、おしゃれな街ではない」と話した。その上で「だからこそ、上手くいけば化ける。JHが街に変化をもたらすかもしれない」と見ている。
 「サンパウロにはサンパウロの文脈があり、ロンドン、ロサンゼルスはもちろん違う」と述べ、都市ごとにJHが変わることも明らかにした。
 一方、両施設共に年内にオープンできるか暗雲が立ち込めている。関係者によれば、当初の予定では初開館はサンパウロではなかった。他が遅れて、ほぼ予定通りに進んだここが結果的に一番になった経緯がある。
 サンパウロの場合、開設地が公式発表されたのが昨年1月。そこから丸1年かけ、今年1月に竣工、5月開館だった。公式発表から開館まで1年4カ月。ロンドン、ロサンゼルスに関しては未だ詳細な開設地は発表されておらず、竣工、開館の日程も「年内」とあいまいなまま。
 最初のJH予算は19年3月までしか計上されておらず、その後は段階的に自走化をはかり、最終的には独立採算での事業継続を目指す方針。開館が遅くなって来年にずれ込めば、当初の予算期間は実質1年間しかない。存在感を固める前に、さっそく「事業の自走化」を求められる可能性がありそうだ。
 外務省はJHを「戦略的対外発信の強化に向けた取組の一環」と位置づけ、親日派・知日派の拡大を目指しており、早期開館が望まれている。
 JHサンパウロでは今後、TOTOギャラリー「間」による「藤本壮介展 未来の未来」の開催が予定されている。「誰もまだ知らない未来の建築とは、どんな姿をしているのだろう?」をコンセプトに、創造的な建築物の模型を展示する。
 ロボットのデザインも手がけることで有名な東京大学生産技術研究所の山中俊治研究室の「Prototyping in Tokyo」展も企画されている。原氏は「これから日本のテクノロジーをどんどん見せていく。山本さんの展示はまさにその第一弾」と話した。

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