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日本で無国籍者として13年過ごした日系三世

快に笑う梅本グレンさん

快に笑う梅本グレンさん

 「僕は日本で無国籍者として13年間を過ごした」――5日、サンパウロ市内のホテルで開催された「ブラジル倫理法人の会」設立式典後の祝賀昼食会で、偶然隣り合わせた北米の日系三世から、そんな衝撃的な一言を聞いた。

 「父がノーノー・ボーイだったんですよ。僕もツールレイク強制収容所で1944年に生まれた。それで父も僕も米国籍を剥奪され、日本に軍艦で送り返された」。そんな驚くべき過去を語るのは、ロサンゼルス近郊在住の梅本グレンさん(73)だ。

 日米開戦後、米国では日本移民はもちろん二、三世まで敵性外国人として扱われ、強制収容所に入れられた。

 米国政府は成人収容者に対して「忠誠に対する質問状」を出した。質問の第27項は徴兵年齢の男性に「あなたはいかなる場所にあっても戦闘義務をはたすべく合衆国軍隊にすすんで奉仕する用意はありますか」と尋ね、第28項では全収容者に「あなたは無条件でアメリカ合衆国に忠誠を誓い、合衆国を外国や国内の敵対する力の攻撃から守り、また、日本国天皇をはじめいかなる外国政府・権力・組織に対しても忠誠も服従もしない、と拒絶することを誓えますか」と尋ねた。

 この二つ対して「No」と答えた者が「ノーノー・ボーイ」と呼ばれた。

 まさか国籍剥奪されて、日本に送り返されたとは知らなかった。しかも、梅本さんの父は二世。「父がいくら一生懸命に勉強して働いても、白人と同じようには扱ってもらえず、就職できなかった。有色人種は奴隷のように働かされ、憲法で保障されたはずの『平等』は白人だけのものだった。いい大学出たって日系人なら庭師という時代。父はそんなアメリカの有り方に反発し、政府からの忠誠証明にノーと書きこんだのです」。

 これを聞いて「アメリカ版勝ち組だ」と感じた。ブラジルの勝ち組の場合は、ヴァルガス独裁政権による戦前戦中の日本移民差別や迫害が背景にあったからだ。

 父子ともに国籍を剥奪され、長崎県佐世保の米海軍基地まで軍艦で運ばれて降ろされた。

 「あとは勝手にしろですよ。かといって日本政府が国籍をくれるわけじゃない。日本政府はとても冷たかった。何にもしてくれませんでした。もちろん満州帰りの人が溢れていましたから、それどころじゃないのも分かりますが」。

 「父は大阪で仕事を探し、僕は13年間、無国籍のまま中学2年生まで学校に通いました。58年、米国では米国生まれアメリカ人から国籍を剥奪した件が裁判で争われ、違憲判決がでました。二、三世である僕らから国籍剥奪したのは憲法違反だと判定された。それでアメリカに戻れば市民権が復活することに。だから戻って来たんです」という。

 その後、グレンさんはベトナム戦争に徴兵された。

 「徴兵ってのは大学生は行かなくていい。学校を中退したとか、学歴がない若い男性を対象にしたもの」。

 しかも1966年から68年までという戦争終盤の激戦期だ。戦場の具体的な逸話を尋ねると「詳しいことはしゃべってはいけないと言われている」とのこと。

 一般論だけでいいと粘ると、「ベトナム戦争には前線がない。というかゲリラ戦だから、すべてが前線だった。すぐそばの戦友が突然殺されたことも。もう思い出したくないです。戦場では嬉しい、悲しいなんて感情をもっていたら気が狂ってしまう。できるだけ感情を捨てるようにした」。

 だが、復員してからが問題だった。

 「家庭生活では逆に感情が大切なわけですよ。空調関係の会社を経営し、赤字を出したことはなかった。だけど家庭内がうまく行かなかった。そこで倫理の会に入った」。

 倫理の教えを実践し、人らしい感情を取り戻すと家庭内が円満になった。それを広めるために1993年、倫理の会を海外で初めて南カリフォルニアに正式発足させた。2000年に聖市に倫理の会が発足した際も来伯してアドバイスをした。

 父は生まれた米国に忠誠を誓うことを拒否し、国籍を剥奪されて日本へ。つまりアメリカ人でなく日本人であろうとしたが「祖国」で日本人扱いされなかった。

 グレンさんは米国籍を取り戻したと思ったら徴兵…、戦場で人間性を失った。それを再び取り戻したのが、日本の倫理。

 「人生複雑ですよ!」と豪快に笑い飛ばした梅本さん。2国間を交錯する複雑なアイデンティティ、ある意味、日系人の鑑だ。(深)

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