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《ブラジル》ブラジル日本交流協会10周年=日伯に貢献する人材を育成=日本の若者が異文化で成長

現役研修生とOB・OG

現役研修生とOB・OG

 ブラジル日本交流協会(神戸保会長)は、研修事業の拠点を日本から当地に移して10周年を記念する式典を11日、サンパウロ市の三重県人会館で開催した。同協会は日伯の懸け橋となる人材の育成をモットーに、日本の青少年をブラジルの企業や団体に派遣し、約一年間の研修を行なう。多くの日本の若者に、異なる環境の中でもがきながら成長する機会を与えてきた。

 式典には当地在住の研修OB、研修生受け入れ企業・団体関係者らおよそ60人が集まった。神戸会長の挨拶の後、元官房長官で前身団体の理事長を務めた藤村修さんら関係者からの祝辞が代読され、ビデオメッセージも上映された。
 今年の研修生5人の一人で、物流会社で研修する佐藤桂一さん(28、大阪)は、約80人のブラジル人同僚と倉庫で製品の在庫管理に携わっている。当初はポルトガル語が分からず、会話に苦労した。「互いにどういう人間か分からないから警戒し合っていた。それに彼らのテンションの高さについていけなかった」と振り返る。
 作業内容を把握できず、何をすれば分からないでいると「佐藤はコウモリみたいにじっとしている」と揶揄されたり、小突かれることも。「悔しくて悔しくて。他の従業員に劣りたくないという思いで一生懸命、研修に取り組んだ。3カ月くらい経つと作業に慣れてきて、段々と周りに認められだした」と話す。
 7カ月が経った現在は仲の良い同僚も。研修を通して「自分について話すことの大切さ」を学んだ。「自分がどんな人間かを包み隠さず話せば、相手の警戒が解けて話を聞く姿勢に変わる。臆さずに話すことが大切」と思った。
 佐藤さんの帰国は来年の3月。その後どんな仕事に就くか未定だが、「ブラジルと関わり続けたい」との意思は固まっている。
 佐藤さんの研修先企業の社長、知久エドソンさんは「ここで学ぶことがたくさんあるはず。体験した様々なことを日本で活かして」と話した。
 同会は日伯両国で社会に貢献できる人材を育成することを目的としている。神戸会長は「各企業・団体も同じ思いで研修生を引き受けてくれている。本当にありがたい」と感謝する。今後については「研修の趣旨を理解してくれるひとを地道に増やし、現在はサンパウロ州が中心なので、その他の州にも派遣できるようにしたい」と展望した。


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 ブラジル日本交流協会発足の歴史を紐解くと、1976年のガイゼル大統領訪日時にさかのぼる。日本商工会議所の永野重雄会頭と会食の席上、文化交流を目的とした青少年交換留学制度が発案された。今年3月まで同会会長と務めていた二宮正人さんは、まさにその時に大統領通訳をしていたとか。
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 ブラジル日本交流協会は2000年にブラジルで法人格を取得した後、10年前から現団体名称で研修事業を行なっている。81年に最初の研修生を派遣し、現在に至るまでに800人以上が研修した。ニッケイ新聞で研修を受けたOBだけ見ても、読売新聞、NHK、朝日新聞、北海道新聞、静岡新聞、中日新聞、高知新聞、神戸新聞など錚々たる人材が。当然、他の研修先からもそれぞれの分野の企業や団体で活躍中。うち6%はブラジルに〃戻って〃生活しているとか。ここ40年近くの日伯の絆の大事な部分を、この団体が担ってきたことは間違いない。

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