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ブラジル日本移民史の快挙=サントス強制立退き証言の掲載

挨拶する宮城あきら移民塾代表

挨拶する宮城あきら移民塾代表

 《私の一番の苦しい想い出は、姉があの事件のショックで恐怖症を患い、生涯、精神障害で苦しんだことです》――沖縄県人移民塾同人誌『群星(むりぶし)』第3号145頁には、そんな生々しい言葉がおどる。
 「あの事件」とは、1943年7月8日、ブラジル政府の命令により24時間以内にサントスから日本移民6500人を中心とする枢軸国移民が強制退去させられた事件のことだ。
 冒頭の証言をした屋比久トヨ子さん(84、二世)の姉の夫は、強制退去命令がでたとき、たまたま不在。再び夫に会えるのかという不安を抱たまま、姉は子ども二人を連れて、それまで営々と築いてきた家財一切を投げ捨て、聖市行きの列車に載せられた。さぞや心の傷は深かったことだろう。
 同じく当山正雄さん(96)は当時22歳。トランクを持つ事すら許されず、職場から着の身着のまま列車に載せられ、サンパウロ市の移民収容所へ。
 《1947年にサントスに戻ってみると、自分たちの家屋敷には、他人のブラジル人が住みついており、全ての物がなくなっていた。豚も養っていたが、一匹も残っていなかった。夜空の月を眺めて、悔し涙を流しておりました》(140頁)
 11日午後、沖縄県人会本部で開催された第3号の合評会には、100人以上が集まった。
 宮城あきら移民塾代表はこの件に関して、立退き被害者の日本人585家族のうち60%は沖縄県人だと公表し、《74年の長い間、歴史の闇に置き去りにされ、不問にされて来た。まさに日本移民版「出エジプト記」と言われるのにふさわしい戦時下の苦難の歴史だ》と断罪。《家族離散の強制退去の過程で精神に障害をきたし、生涯にわたって苦しみの中にあった同胞のことを思えば、胸が詰まる思い》との胸中を語った。

講評をのべるエスタード紙論説委員の保久原ジョルジさん

講評をのべるエスタード紙論説委員の保久原ジョルジさん

 エスタード紙論説委員の保久原ジョルジさんは「私の義兄弟の両親の名前を、強制立退き者リストに見つけて驚いた。掲載された4人の立退き者の証言は、ほとんど知られていない歴史的事実。群星編集委員の仕事を称賛したい」と力説した。
 比嘉・玉城・アナ・マリアさんも「2年前に亡くなった母のことを思い出した。強制立退きさせらた時、母は妊娠10か月だったが、駅の机の下で寝なければならなかったと辛そうに言っていた。母が生きていたら、この貴重な歴史をもっと聞けたのにと悲しくなった」と感想をのべた。
 第3巻には立退き者リストに加え、4人の体験証言、この件のドキュメンタリー映画を製作中の松林要樹監督の言葉など、計23頁も書かれている。これだけでも移民史的な快挙といえる。
 というのも、この件に関し『日本移民80年史』はわずか6行しか触れず、立ち退き人数も1500人と「控えめ」。長い軍事政権が終わった後とはいえ、80年史刊行当時はDOPS(政治社会警察)もあった。政府批判的な内容は自粛する雰囲気が強かったと推測できる。
 この件の調査が意義深いのは「ブラジルの歴史」として側面だ。通常、移民史に盛られる内容はコロニア中でしか重要性を持たないことが多い。でもサントス強制立退きは、ブラジル近代史、ヴァルガス独裁政権の闇そのものだ。数あるヴァルガス関連本にもほぼ触れられていない。コロニアからの調査はもちろん、大学研究者やジャーナリストによる追及も同時に行ってほしい。

客席の前列左端からリオ在住のドキュメンタリー映画監督ダヴィ・レアルさん、人権問題に詳しいアドリアノ・ジョゴ元聖州議員、勝ち負け抗争を描いた映画『闇の一日』奥原マリオ純監督

客席の前列左端からリオ在住のドキュメンタリー映画監督ダヴィ・レアルさん、人権問題に詳しいアドリアノ・ジョゴ元聖州議員、勝ち負け抗争を描いた映画『闇の一日』奥原マリオ純監督

 奥原マリオ純さんもマイクを握り、「サントスの事件はヴァルガス時代の日本移民抑圧を象徴する事件。そのような人種差別、人権侵害の積み重ねが、戦後に起きた勝ち負け事件の社会的背景にはあった。だから僕らは、日本移民への歴史的人権侵害への謝罪を求める運動を進めている。これを機に県人会も運動にぜひ加わってください」と呼びかけた。
 宮城さんは「第4巻でも引き続き、この件は追及を続けますよ」と力強い一言で応えたのを聞き、本当に頼もしく感じた。『群星』は全200頁、他にも興味深い話が盛りだくさん。読みたい方は沖縄県人会や弊紙編集部で無料配布中。(深)

移民塾同人と来賓ら

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