珍しい日系自動筆記者=エスピリタの山本さん=7歳から守護霊の声聞く=霊能力の目覚めを語る

新年の予測を語る山本さん

新年の予測を語る山本さん

 守護霊の声を聞き、自動筆記で人々の道を示した故シコ・シャビエルは有名だが、それと同種の能力を持つ日系自動筆記者がいる。サンパウロ州グアルーリョス市に住む山本ゆりこさん(67、二世)だ。山本さんは7歳から守護霊の声を聞き人々に伝え、日本からも相談してくる人がいるそう。信者の協力で、今年7月に「山本ゆりこ永遠の星協会(Associacao Yuriko Yamamoto Infinitas Estrelas)」(協会サイト=http://www.associacaoyurikoyamamotoie.com.br/)を設立した。日系人でこの種の能力で活躍する人は珍しい。今回は山本さんに霊能力に目覚めた経緯、日本移民110周年皇族ご来伯の可能性も取材してみた。

 山本さんが霊の声を聞き、目で見ることができるようになったのは7歳のとき。祖母が住んでいたサンパウロ州ビラッキ市に訪れた際、曾祖父の霊が見えた。祖母は福岡県飯塚市の光正寺という浄土真宗本願寺派の女性住職だったそうだ。
 「80歳くらいのおじいちゃんが家の中に立っている」と祖母に伝えると、「私も見えている。その能力を大事にしなさい」と言われ、山本さんは他人の守護霊のメッセージを伝え始めた。
 9歳のときに生長の家の創始者、故谷口雅春氏が来伯し、アラサツーバで講演会を行った。山本さんも祖母の友人に連れられ参加した。谷口氏は会場脇から入り信者に挨拶をした後、真っ直ぐに山本さんの元に来て頭に手を乗せ「あなたは神の子。たくさんの人を助けて欲しい」と微笑んだそうだ。
 「だから私はこの仕事をしているのよ」と当時を思い出し、懐かしそうに目を細めた。ちなみに山本さんは生長の家の信者ではない。

自動筆記能力の目覚め

 12歳でアラサツーバ市に引越し、15歳でサンパウロ市へ。そこで自動筆記ができるように。「ある日部屋で勉強しているときに、金色の綺麗な光が見えた。守護霊の声が聞こえて、手が勝手に動いて言ったことをメモにとっていた」と振り返った。
 守護霊のメッセージを書いている間、誤字や内容を飛ばすことはないのか聞くと、そもそも自動筆記中にペンが離れることはないそう。「手がひとりでに動くような感じね。書き終わるまで離せないのよ」と笑った。
 山本さんは学校に通いながらも、「その能力を絶やすことのないように」という祖母の言いつけを守るため多くの人の相談に乗った。職業能力学校を卒業した後、本格的にエスピリタの道を歩み始めた。
 ありとあらゆる人が山本さんの下に助言を求めてくる。その中には企業家も多く、山本さんに相談していた人で協会の理事を担当している人もいる。

相談者には企業家も多い

協会のイベントに出席した大久保さん

協会のイベントに出席した大久保さん

 その中の一人が大久保ウィリアムさん(43、三世)だ。大久保さんは23歳のときに人生相談のつもりで山本さんを訪問した。当時社員4千人を抱えるITの大企業に研修生として勤めており、将来に悩んでいた。
 山本さんの助言通りに祖先供養のために毎日祈り始めると、同企業に入社し29歳の時には副社長にまで昇りつめた。「でも自分の会社が欲しくてね。副社長は雇用される側だ。だから自分のコンサルタント会社を作った」と笑った。さらに一社買い取り、経営を続けている。
 今でも相談に来る企業家はたくさんいる。もしも会社のお祓いが必要な場合には、出向いてお祓いをするという。その場合は350レを受け取っている。住居のお祓いは250レだそう。

日本で引きこもりを部屋から出す

 2010年には日本に呼ばれ、「20年間引きこもっている長男を出して欲しい」という依頼を受けた。部屋には4つの〃貧しい魂〃が滞留しており、長男の記憶を全て失わせ部屋から出られなくしていた。
 部屋から出てきた長男は髪、髭、爪が伸び放題だった。衝撃的な姿に山本さんも驚いたという。「爪なんかこんなになってたのよ」と30センチほどの幅を示した。その長男は現在、亡くなった父の跡を継いで魚の仲買商の代表を務めているそうだ。
 なんでも、父との大喧嘩による悲しみや怒りで「魂の位」が長男の部屋の四隅にいた貧しい魂と同じ程度に下がってしまいたそうだ。
 一番多い相談は健康の問題について。そして、大体の原因は先祖から続くカルマ(業)だそうだ。
 「神様が人に与えた使命は他人を助けること。それをせず、物に執着してばかりいるとその使命を果たせない」と説明した。「日本人も例外じゃない。物や金に執着し、神様の使命を無視したり忘れてはいけない」と呼びかけた。
 例えば、協会役員の一人、フクミツ・エジソンさんは15歳から慢性的な頭痛を抱えていた。成長するごとにひどくなっていくが、薬も効かなければ病院でも原因がわからない。
 とうとう山本さんのところに相談に来たフクミツさんに、先祖供養を勧めたそうだ。「神様を信じる心、祖先を崇拝することを一家で忘れていた。その道を示すと彼の頭痛はなくなったのよ」と事例を紹介した。
 相談者の守護霊の声を聞き、祖先の供養が必要な場合、「カトリック式でして欲しい」「浄土真宗がいい」と守護霊が宗教を指定してくることがあるそうだ。

山本ゆりこ永遠の星協会が昨年設立

イベントで講演する山本さん

イベントで講演する山本さん

 山本さんと協会役員は協会設立前の16年12月、グアルーリョス市内に活動用の場所を借りた。活動申請の承認が1年2ヵ月遅れ、17年3月に協会としての活動が始まったそうだ。
 協会では山本さんの講演会や自分の目標を達成していくためのモチベーション向上についての講演、子供向けのイベントなどが行われる。講演会に参加するためには保存可能な食糧の寄付が求められ、集まった食糧は全て慈善団体に寄付されている。
 協会で週に一度開く相談会では報酬を受け取っていないそうだ。
 山本さんは協会開設の理由について「多くの人を助けたいから」と語った。協会運営などのために家や会社のお祓い費のほか、山本さんが執筆した本の売り上げが充てられている。その本は、自分の会社「山本コンサルティングアドバイザー」社から刊行されている。同社で役員を務めるのも協会役員らだ。

皇太子がご来伯!?

 最後に、山本さんに新年のブラジル日本移民110周年の際、皇族がご訪問されるか予測してもらうと、「皇太子徳仁親王と雅子様が来るかもしれない」とあっさり一言。
 それを聞いて腰を抜かしそうになった記者が、「…ほっ、ほっ、本当にそんな可能性があるんですか?」とおそるおそる畳み掛けると、「もうそういう予定になっている。もちろんブラジル民にとっても嬉しい訪問になるでしょう。特別なイベントになるわ」と確信に満ちた微笑を浮かべた。
 客観的に考えると相当難しそうだ。でも、万が一どころか〃億が一〃当たったら「山本さんの予言はすごい」という証明になる。なら、あえて言ったまま書き残そうと記者は決意した。とはいえ繰り返すが、実際は難しいに違いない。
 山本さんは「美しい日本の歴史を代表する人物が来ることはブラジル民の誇りにもなる。ブラジルにとって歓迎するべきこと」とご来訪について述べた。   (國分雪月記者)