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アフリカの後塵を拝するラ米=なぜ革新分野で遅れ取るのか=パラグァイ在住 坂本邦雄

メキシコ人のギレルモ・デル・トロ監督(Gage Skidmore, via Wikimedia Commons)

メキシコ人のギレルモ・デル・トロ監督(Gage Skidmore, via Wikimedia Commons)

 映画「La forma del agua」(2017年「水の形」ギリェルモ・トーロ監督、邦題『シェイプ・オブ・ウォーター』)が、多くのオスカー像・アカデミー賞にノミネートされた快挙は、当然メキシコでは祝うに値するし、さらにラ米諸国の人々もそれぞれの国境内外で、ラテン系人材がタレントを発揮して各分野で成功している事を大いに誇っても良いだろう。
 しかし、最近の世界革新ランキングが示すものは、地域にとって憂慮すべき大きな問題なのである。
     ◎
 ブルームバーグ社(Bloomberg L.P.)の新たな革新格付けが示すところによると、世界の最も革新的な50カ国の中にラテンアメリカの国は一つも挙がっていない。
 2018年度のブルームバーグ革新ランキング最高位のトップテン10カ国は韓国、スエーデン、シンガポール、ドイツ、スイス、日本、フィンランド、デンマーク、フランスとイタリアが占めて、アメリカは11位に転落した。
 同格付けリストのその他の国々は、中国(19位)、ロシア(25位)、スペイン(29位)。末尾にはチュニジアの(43位)、南アフリカの(48位)、モロッコの(50位)が最後を飾る。
 このような傾向は、ラ米諸国に対する厳しい警鐘であるべきだ。
 なぜなら、革新を怠り生産性の効率化に努めない国は、洗練された工業技術も磨けず、国際競争力は衰え、その未来は凡庸な経済や深刻化する貧困社以外の何物でもないからだ。
 その他、企業家の出くわす官僚的な障害のある類似の格付けとは異なり、より広い経済規準にもとづくこのランキング調査は、純粋な意味での革新に厳密な焦点を当てるものである。
 つまり、投資額及び経済開発の割合、並びに人口100万人当たりの特許件数を、調査のパラメーターにしている。
 経済規模の大きさからすれば、ブラジルやメキシコは世界の経済大国15カ国の中に当然数えられなくてはならない。それに加え、アルゼンチンとコロンビアも、そこから余り遠くない位置にあるはずだ。
 オバマ政権時代、国務省の元革新問題の顧問官で、近著『Las Industrias del Futuro』(未来の産業)の著者アレック・ロッスは、ブルームバーグ革新ランキングの、世界50カ国中に、ラテンアメリカからは一つの国も挙がって居ないのは、特に驚くには及ばないが、残念で悲しい事だと語った。
 その理由は、チリ、ブラジルやメキシコに有能なタレントはいても、その多くは国を離れて、カリフォルニア又はテキサス、あるいはロンドン等に「頭脳流出」しているのが問題だと言う。
 そして、ラテンアメリカ諸国は、企業家や進取のアイデアマンにもっと優しくフレンドリーに対応すべきだと主張する。
 例えばブエノスアイレスの23歳の才女が、自己の起業精神を存分に発揮するには、カリフォルニアへ移住せざるを得ない等の矛盾が生じない気運の社会を、ラ米地域諸国は構築すべきだとする。
 革新に有能な人材が足りないのではなく、各自の国々に存分に才能を展開するのが大変困難だという点が問題なのだ。
 なお、アレック・ロッス氏いわく、ラ米における革新家が直面する、より大きな問題は過度の規制以外に、資本へのアクセスの便宜が不足している事である。
 さらに「ラ米諸国に対する自分の批判でもっともつまらく思う点は、起業資本を探すに当り、『当人の家族は?』『母親は?』『父親は誰か?』などと、ビジネス上で煩わしい身内の関係を詮索される事だ」と言う。
 アメリカ合衆国では誰が父親であろうが構った事ではない。投資家の唯一の関心事は、起業のアイデアいかんにあって、ひとえに事業の収益性が大切なのだ。
 しかし、「各国政府は、銀行やベンチャー資本家等の民間部門と協力し、指摘の幾つかの文化的旧習の是正に取り組むべく、啓発に努めなければならぬと思う」と、最後にアレック・ロッス氏は締め括った。
 同感である。しかし更に大切なのは、ラ米諸国はその政策アジェンダの中心に、国政の革新化と近代化の目標を定め、その遂行に今から邁進しなければならない。
 件のブルームバーグ最近の革新ランキングが持つ意味が、地域諸国の間で注目されずに過ごされた事実は、大いに憂慮の動因として懸念すべきである。
 または、同ランキングは間違った作成によったものか。その場合は厳に間違いの原因を追究する必要がある。あるいは、当該フォーラムでの第一義テーマとして問題点を論議し、全地域諸国の猛省喚起を促すべきである。(註・本稿は1月30日付ABC紙に載った、マイアミ在アンドレス・オッペンハイマー記者の記事を参考にしたもの)

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