ホーム | コラム | 樹海 | カーニバルのパレードとは真剣な競技だ!

カーニバルのパレードとは真剣な競技だ!

2016年のリオのカーニバルより(Alexandre Macieira/RioTur)

2016年のリオのカーニバルより(Alexandre Macieira/RioTur)

 今週から来週にかけて、ブラジルでは、最も有名なリオをはじめとしたカーニバルの週間だ。コラム子がブラジルに来て住みはじめたのは2010年4月のことだが、この季節を体験するのも8回目。既に自分にとってもおなじみのものとなっている▼ただ、日本からやってきた身として毎度思うことなのだが、ブラジルでのカーニバルの印象と、日本をはじめとした外国のそれではあまりにイメージが違いすぎることだ▼日本だととにかく、「女性が裸に近い派手な姿でサンバに乗って踊る祭」という印象が強い。それが決して間違っているわけではない。だが、彼女たちはただ楽しく踊っているわけではないこと。その認識がどうも日本人には足らないように思われるのだ▼その証拠とも言えるのが、日本版ウィキペディアの「リオのカーニバル」の項目だ。そこに書かれているのはあくまでダンスと音楽のことだけで、一番肝心なところが完全に抜け落ちているのだ。それは「カーニバルは、エスコーラ・デ・サンバと呼ばれるサンバグループ同士の真剣なコンテストである」ということだ▼逆にこれがポルトガル語版ウィキペディアの「リオのカーニバル」だと、割かれていることはほとんどデスフィーレ(パレード)でのエスコーラの対決のことだ。グローボ局が毎年、2夜連続で夜通しでリオのサプカイのサンボードロモ(サンバ会場)から中継しているのは何も「裸踊りに興じている人たち」ではなく、エスコーラ同士の戦いなのだ。それはサッカーの選手権のそれと同様のものであり、成績の悪かったエスコーラは2部に落ちるというシステムまであるほどだ▼ブラジル人の中にどれだけこのコンテストに夢中か示す例をあげておこう。これもやはりポルトガル語版ウィキペディアなのだが、この毎年のリオのデスフィーレでの成績を、1932年から2017年までの結果を、参加エスコーラはもちろん、審査員から獲得した得点までが詳細に書かれている。日本でこのように古い公式記録が残っているのはせいぜい野球くらいのようだが、それくらい「競争することに長年のファンがついている」存在なのだ▼かくいうコラム子もブラジルに来た当初はそうした事情がわかっていなかった。少しずつそれがコンテストであることを知っていき、数年前に年度別成績表をネット上で発見したときは、ブラジル人たちのデスフィーレに対する愛を感じ、深く感動も覚えたほどだ▼こうしたことからコラム子もグローボの深夜の中継を見るようにしているのだが、とにかく名門エスコーラになるほど出番が朝方になるのでつらい。ベイジャ・フロール、マンゲイラ、サルゲイロ、ポルテーラ、チジュッカといったところが名門だが、サンバの主題歌が全て同じに定められ、各エスコーラの持ち時間が1時間ある中でこれを見続けるのはよほどの愛情がないとできないことでもある。それでも、天才演出家パウロ・バロスの奇想天外なパレード演出などを見ると「起きてて良かった」と思えるものだ▼浅草サンバ・カーニバル関係者は当然周知のことだろうが、こうしたブラジル現地流のカーニバルの楽しみ方が、日本の一般の人にも伝わらないものか。幸いなことにカーニバルに憧れる日本の若者たちがエスコーラの一員として参加する話も珍しくない。そんな彼らの体験談が日本で正確に伝わって行って、徐々にカーニバルの印象そのものが変わっていけば良いのだが。(陽)

image_print

こちらの記事もどうぞ

  • もう一つのカーニバル。真打「ウニードス・ダ・ラヴァ・ジャット」登場?2016年2月6日 もう一つのカーニバル。真打「ウニードス・ダ・ラヴァ・ジャット」登場?  5日早朝、パラナ州都クリチーバの連邦警察拘置所から二人が、近隣の刑務所に移送されるとのニュースが流れた。政治評論家は《つまり、新しく誰かを捕まえるために空きを作った。昨年の例を考えれば、近日中に次のラヴァ・ジャット作戦が展開されるかも》とコメントした▼前回の同作戦は、南聖海岸 […]
  • 樹海2014年6月14日 樹海  日韓、ドイツ、南アフリカ、そして今回。ブラジルで4回目のW杯を迎えるコラム子だが、あまりサッカー自体には関心がない。ただ、開幕が近づくにつれ、市民が浮き足立つことで生まれる独特の高揚感は大好きだ。カーニバルが近づくにつれて変わってゆく雰囲気とはまた違う、国威発揚的なイメー […]
  • コラム 樹海2013年12月18日 コラム 樹海 ニッケイ新聞 2013年12月18日  来年は3月がカーニバル、6月がW杯、10月が大統領選挙——と大イベントが集中しており、息つく間もなく、アッという間に一年が過ぎさるだろう▼カーニバルでは地元開催W杯への期待を、お祭り気分で盛り上げるに違いない。W杯でセレソンが勝てば、今ま […]
  • ブラジル社会面座談会=ざっくばらんに行こう!=大統領選挙の勝敗を占う=独断と偏見でズバリ!勝者はだれか=サッカーW杯との深い関係?2017年12月29日 ブラジル社会面座談会=ざっくばらんに行こう!=大統領選挙の勝敗を占う=独断と偏見でズバリ!勝者はだれか=サッカーW杯との深い関係?  2018年は大統領選挙の年――。独断と偏見による激論で、ブラジル社会翻訳面記者と編集長が紙上座談会でズバリ勝敗を占った。ラヴァ・ジャット作戦が進展する中で、2015年末にはジウマ大統領の罷免審議がエドゥアルド・クーニャ下院議長(当時)によって始められ、2016年8月には罷免が […]
  • JICA=日系社会ボランティア30周年=リレーエッセイでたどる絆=第17回=受け入れてくれた地元に感謝2017年3月10日 JICA=日系社会ボランティア30周年=リレーエッセイでたどる絆=第17回=受け入れてくれた地元に感謝  皆様、初めまして。現在マット・グロッソ州カセレス市で野球指導ボランティアとして活動しています山下裕太郎です。  日系ボランティア30周年記念という節目に立ち会うことができ、大変光栄に思います。日本から派遣されるボランティアにとっても、また現地で活動されている多くの人々に […]