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憩の園(救済会)に手をさしのべよう=サンパウロ市在住 網野 弥太郎

憩の園にあるドナ・マルガリーダの胸像

憩の園にあるドナ・マルガリーダの胸像

 2018年1月30日午後7時に、私たちは前会長、現理事吉安園子氏よりの招集があり、ぜひ出席して憩の園の再建についての会合に出席して欲しいとの話をいただきました。
 当日、本田理事から憩の園の現状、特に財政事情についての説明があり、最近の日系社会に関する高齢者化と日系子弟の出稼ぎ等で経済事情で収入不足の為に園の財政を逼迫させており、ここ数年、毎月の収支で支出が収入を上回り、毎月25万レアルの赤字を計上しているというのです。ざっと計算しても年に300万レアルの赤字が出ていることになります。
 このような状態になるまで理事会、園の職員がどうしていたのか? その疑問に出席者一同が当日感じたことです。本田専任理事の説明を聞いて納得しました。こういう事です。
 最初入園希望者が園から出した条件を上回り、最低給料の4倍から6倍の額を提示され承認して入園したが、その家族の家長の死亡、高齢化、子弟の日本への出稼ぎ等の理由で、賄えるはずの入園料の収入が激減してきた理由と入園した人々の高齢化(医師、看護師、栄養士などのおちからによって)した為に、現在90歳の長寿者を越えて元気な人がいると説明があり、少し納得できた次第です。
 ちなみに、入園者の年齢内訳は80歳未満14人、80歳~89歳33人、90歳~99歳21人、100歳以上1人で計69人。職員数は全てで97人(夜警、運転手まで入れて)毎月の総経費が46万レアルだそうです。
 ここ数年の赤字は特別寄付、バザーの収入、リファ販売、寄付された土地の売却などでこれを充当してきたと説明されました。理事の方々のご苦労が理解されます。
 さて、入園者の内訳は一世が45人、二、三世が29人で都道府県別では東京出身が10人、熊本が4人、北海道が3人、高知県3人、福岡2人、三重2人、山口2人、以下愛知、愛媛、福島、岐阜、広島、鹿児島、兵庫、京都、長野、長崎、岡山、沖縄、大阪、静岡、富山、山梨が各1人ずつ。
 また二、三世の場合に見るとアラサツーバが4人、コンキスタ(MG)2人、グワイサラ2人、サンパウロ2人、以下アダマンチーナ、バストス、ビリグイ、クリチーバ、イグアッペ、イタリリ、モジ、ピラジュイ、ペドロ・デ・トレード、ペレイラ・バレットス、プレジデンテ・プルデンテ、プレジデンテ・ヴェンセスラウ、レジストロ、タボン・ダ・セーラ、タクワリチンガ、ツッパンが各1人ずつとなっております。
 保護者内訳は息子、娘35人(49%)、親戚が31人(30%)、家族など15人(21%)の状況で、訪問は15日に1回が31人、週に1回が21人、月に1回が2人、時々が2人、全然なしが15人と疎遠になっているのが現状にあります。
 この様な状態で憩の園の経営が困難になっているのが現状で、その分理事会、職員にかかってくる負担が大きいと言わねばなりません。

網野さん

網野さん

 ここでこの解決策を皆さんに考えていただきたいのです。私たちブラジルの移住者は時代を越えてこの地に移り住み、この地を第二の故郷として永住する覚悟でいます。かつて渡辺マルガリーダさん、宮腰、石原、高橋さんたちがこの救済会(旧名)を創立したのは同胞の恵まれない人にひかりを与える為に手をさしのべ戦前戦後を通じて何と60年間、会の基礎を作り、爾来、歴代の役員、関係者が会の運営を担い、今日まで継続する事が同胞に対する温かい温情の賜であり、日本人に対する博愛の精神と愛情であり、後陣の我々にとっても見過ごすことの出来ない事と思います。
 そこで私は皆々様に〃貧者の一灯〃をお願いするため、入園者の出身県、入植地、最終居住地、所属していた日本人会、同航会、趣味の会、スポーツ、文化団体等と入園者との縁故を頼って、1サラリオから2サラリオを、毎年当会に寄せていただき、団体の会員になっていただきたいのであります。
 ちなみに、現在入園している家族に戦後移住者の家族が多く、1953年後に移住された方と伺っております。まさに歴史の移り変わりを感じます。
 確かに今日ブラジルの社会経済状態は大変困難期にあります。しかし先人が私達に途を開いてくれたお蔭で今日の私たちがあるのも間違いのない事実、歴史であります。この私たちが各入園者との縁を頼りに協力出来るとすれば、本年移民110周年の大きな節目の年に、また記念すべき年に出来る最大のことであると言えましょう。
 今日、日系社会も多様化のなかで、三世で混血が42%、四世では62%という人文研の報告もあり、日系人だけの老人ホームへの協力は難しくなって来ているのもまた事実であり、自分たちが住む最寄りの施設への協力もありましょう。
 しかし、「血は水より濃い」ではありませんが同胞の困難を見過ごしてはならないと思います。
 また、当日顧問の大先輩から今日の日系団体の福祉事業を一つに統一し援協を中心に救済会、子供の園、希望の家が一つになり日本政府、ブラジル政府に対しての交渉力を強大にして、二世、三世、四世に各施設の事業を解りやすくする為に、今こそ統一する事が必要であるというご意見もありました。
 けだし名言で、時宣を得た発言であります。
 また他の顧問の方は今こそ憩の園の財政を解決するため、早急に特別委員会を作り、コロニアの皆様の英知を集めるべきとのご意見もあり、日系社会110年でますます世代交代が進み、多様化社会の中で私たちの身体の中を流れる血液は間違いなく日本人のものであると信じて、ここに私見を述べコロニア先輩諸兄のご協力とご賛同をお願いするものであります。
(2018年2月1日記)

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