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移民史料館=特別展「子供移民の生活」開始=同名著作の出版を記念=当時の玩具、教科書、雛人形展示

出版を祝した関係者

出版を祝した関係者

 ブラジル日本移民史料館は、創立40周年及びブラジル日本移民110周年の特別展『子供移民の生活』を「桃の節句」(雛まつり)である3日から同館9階で開催している。これはポーランド移民の歴史学者のモニカ・ムサッチ・シートリノウィッチ氏と夫ローネイ氏が、同館所蔵の写真史料をもとに制作した同名の著書出版に伴って企画されたもの。同日午後2時からは出版記念会も併せて開催され、来館者は、子供移民の日常生活の中で使われた玩具など展示品約70点を鑑賞し、子供時代を懐古していた。

 著者のモニカ氏は、16年に刊行された『サンタクルス病院の歴史』(ポ語)編纂に携わるなど、日本移民史にも精通する歴史学者。本著の着想を得たのは、子供移民の着物を目にしたことがきっかけだった。その絵柄に配されていたのは民話『浦島太郎』。「通常、移民と言われて思い浮かべるのは大人。子供移民に着眼して歴史を捉えたかった」と語る。
 笠戸丸から1958年までの半世紀における聖州での子供移民の生活を、航海、仕事、学校、遊び、祭、スポーツ、娯楽などに本書は焦点をあてて、移民史の一部を再構成したもの。
 本展では、時代や背景説明のパネルと共に、日常生活の中で使われた玩具、本や教科書、日本の民話絵本やレコード、お稽古事に使われた着物やスポーツ用品、雛人形や鯉幟など、日本文化への興味に繋がることを期待し、同館所蔵の約70点が展示されている。
 山下リジア玲子運営副委員長は、「乗船者名簿を見ると子供移民は大人の4~5倍いる。2つの文化の狭間に苦しみ、家族を支えるため仕事を手伝い勉強できなかったのが大多数。そんな子供たちにも〃遊び〃があったことが展示からは感じられるのでは」と語る。

特別展初日の会場の様子

特別展初日の会場の様子

 「日本文化を熱心に子供に伝えようとする日本人の特性が改めて認識される一方、現在の教育事情の変化も感じられる。移民の子供達がどういう生活をしたのか知ることができるなど、若い方も興味深く見て頂けるのでは」と見所を語った。
 来館した山中イジドロさん(83、二世)は、サントス強制立退でバストスに移住、戦後はそこで父親が勝負抗争に巻き込まれるなど国家の狭間で悲痛な子供時代を送ったという。「昔は薪で湯を沸かすゴエモン風呂だったから、入るのが一苦労だったなあ」と懐古していた。
 本書は、聖州文化局から助成を受けて出版。同館9階で一冊20レアルにて販売中。本展は7月29日まで。問合せは、同館(11・3209・5465/3208・1755)まで。


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 出版記念会では、移民史料館の改装計画について触れ、来館者に協力を求める場面もあった。山下リジア運営副委員長によれば、進出企業数社が既に支援を決定しており、資金が入ってきたらすぐに取り掛かれるよう準備を進めているという。改装計画は、老朽化した建物・設備を改修する「基礎改修」と、展示方法を近代化する「マルチメディア改装」に分かれる。マルチメディアでは、戦争勃発から戦後の期間において、二分された日系社会がどのように統合されていったのかに焦点を当て、日系社会を鼓舞した三笠宮殿下のご来伯や、文協の創立、日系企業の進出なども取上げる。実物の史料を展示するには空間に限度があるが、映像史料ならばその可能性は無限大に広がる。来館者が各々の関心に従って深く掘り下げて見られるような、興味深い内容となることを期待したいところ。

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