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仏教はブラジルでどう広まったか=菅尾監督、映画製作追い込み=「変わることで本質浮き彫りに」=ブラジル9月、日本10月公開

映画の1シーン

映画の1シーン

 ブラジルで仏教はどう広まってきたのか――南米浄土真宗本願寺派(通称・西本願寺)の開教師として来伯した菅尾健太郎さん(40、広島県)が監督をつとめるドキュメンタリー映画『Três Joias(邦題:ブラジル仏教)』が完成に近づいている。総制作費は約35万レアル。2年がかりで撮影を終え、いまは編集中だ。ブラジルでは9月、日本では10月に日本語字幕付きで初上映される予定。110年前に笠戸丸移民と共に伝来した仏教が、ブラジルでいかに広く受け入れられているかを描いたこの作品の見どころを、菅尾さんに聞いてみた。

 映画のタイトルを直訳すれば「三宝」。仏教における三つの宝「仏・法・僧」を示し、それに則って3部構成(各1時間)の形をとる。
 当地で仏教と深いかかわりを持つ40人に取材するが、うち日系人は1人のみ。日系社会以外にも広まった現状が様々な観点から語られる。菅尾さんはブラジル人スタッフと協力しながら、ポルトガル語のブラジル映画として制作した。
 第1部『仏陀―ブラジルの僧侶』では禅宗の孤円師(俗名クラウジオ・ソウザさん)、チベット仏教のラマ・パドマ・サンテン師、南米真宗大谷派の釈利満師(俗名リカルド・マリオ・ゴンサルベスさん)など、当地仏教界を代表するブラジル人僧侶が登場し、当地での仏の教えの実践、その受け入れられ方の特徴などを紹介する。
 第2部『達磨(サンスクリット語で「法」)―一般人と仏教の関わり』では民間のブラジル人仏教徒の活動を取上げる。大学の仏教学者や出版社代表としてポルトガル語で仏教書を刊行するエニオ・ブルコス氏、ブラジル最大の仏教ポータルサイト「ダルマネット」の創設者など、各登場人物の仏教徒の関わりと普及活動の様子を撮影した。
 第3部『サンガ(僧団)―仏教のコミュニティ』では、ブラジルにある浄土真宗やチベット仏教のなど宗教コミュニティに密着し、一般にはまったく知られていない内部の生活を描き、今後の展望にも踏み込んだ。
 菅尾さんは「土地にあわせて変わっていくことで、むしろ、仏教の本質的なものが浮き彫りになる」と前置きし、「仏教がブラジルのどこに広がり、どう受け止められ、どんな変化をしているのか。この110年の間に『ブラジルの仏教』ができつつある。ブラジル仏教の多様な側面を描き、仏教徒として生きる課題を考えるもの」と紹介した。
 菅尾さんは日本で中央仏教学院や行信教校といった仏教専門校で学び、02年に開教師として来伯した。05年にマリリア本願寺の主管となり、ポルトガル語の日曜礼拝、仏教講座の開始、NGO(非営利団体)を設立して青少年へ情操教育を行なうなど布教の形を模索してきた。
 12年の米国留学時に米国仏教の歩みを記録した仏教映画『Streams of light』を撮影したことから、第2段としてブラジル編を作った。作品の詳細は公式サイト(http://www.tresjoias.com.br)へ。

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