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高齢化社会で始まった「長すぎる老後」への挑戦=サンパウロ市在住 毛利律子=(3)=アルツハイマー病の特徴

通常の老人の脳(左)とアルツハイマー型認知症患者の脳(右)。アルツハイマー型認知症では大脳皮質、海馬の萎縮、および脳室の拡大が見られるようになる(By derivative work: Garrondo [Public domain], via Wikimedia Commons)

通常の老人の脳(左)とアルツハイマー型認知症患者の脳(右)。アルツハイマー型認知症では大脳皮質、海馬の萎縮、および脳室の拡大が見られるようになる(By derivative work: Garrondo [Public domain], via Wikimedia Commons)

 「アルツハイマーアソシエーション」というインターネット・サイトがある。そこでは病状について、明瞭かつ詳細な情報を発信しているが、便宜上、そのサイトから次のように要点を引いてみた。
 実際に画像とともに解説を見たいと思われる方は、「アルツハイマーアソシエーション・日本語版」と検索すると容易にアクセスできる。

  《1》
◎原因および危険因子
 アルツハイマー病が脳細胞の進行性破損を伴うことは研究により発見されているが、なぜ起こるのかは未だ解明されていない。しかし、発症の可能性を高める危険因子が特定されている。

◎年齢
 最もよく知られる危険因子は、加齢である。 65歳以上のアメリカ人のうち、8人に1人はアルツハイマー病にかかっており、85歳以上ではその半数近くが病いにかかっている。

◎家族の病歴および遺伝的性質
 もうひとつの危険因子は、家族の病歴である。親や兄弟がアルツハイマー病にかかっていたという人は可能性が高くなる。アルツハイマー病にかかる可能性を高める遺伝子はひとつ確認されたが、この遺伝子を持っていても必ず発症するわけではなく、その他、ある数種の稀な遺伝子が発症に繋がっていることも分かっている。これらの遺伝子は世界の数百の家系のみに発見され,アルツハイマー病の全症例のうち5%以下である。

◎その他の危険因子
 遺伝子とその他の危険因子との複雑な相互関係により発生する。
(1)【頭部外傷】=重度の頭部負傷、特に負傷が繰り返し発生したり、意識の喪失は、将来的な発症との強い関連性が指摘されている。シートベルトを締める、スポーツに参加する場合はヘルメットを着用する、家の中を「転倒防止」設計にするなどにより、脳を守る。
(2)【心臓と脳のつながり】=脳は、体の中でも最も血管のネットワークが密集している部位のひとつである。アルツハイマー病あるいは脳血管性認知症の発症の危険性は,心臓あるいは血管を破損する多くの疾患により高まる。このような疾患には、高血圧、心臓疾患、脳卒中、糖尿病、および高コレストロールなどが含まれる。

◎全般的に健康に年を重ねるための心がけとしては、推奨されるガイドラインの範囲内に体重を維持し、タバコや過度の飲酒を控え、社交性を保ち、心身のエクササイズを続ける。

  《2》注意すべき10のポイント
(1)日常生活に支障をもたらす程度の記憶の消失
 初期段階で最も一般的な症状のひとつは記憶の消失で、特に最近あった事柄、重要な日時や出来事を忘れてしまう、同じ事柄について繰り返し尋ねる、あるいは以前は自分でしていたことを家族に頼る。
 一般的な老化では、名前や予定を忘れてしまうが、後になって思い出す。それを完全に忘れるようになったら要注意
(2)計画や問題解決における困難
 計画を立ててそれに従ったり、あるいは数字を扱う能力に変化が見られる。慣れたレシピで料理したり、月毎の支払いを管理するのが難しくなる。また、行動に時間がかかるようになる。
(3)自宅、職場、あるいはレジャーの場で慣れていた作業を完了するのに困難がある。
(4)時間や場所についての混乱。
(5)視覚像と空間的相関関係を理解しづらい。
 読んだり距離を判断したり、色やコントラストを見極めるのが難しくなる。知覚という点では、自分が鏡の前を通り過ぎたのに、誰かが部屋の中にいると誤解して、自分自身が鏡に映ったのだと気づかない。一般的老化では、白内障に伴う視力の変化。
(6)会話あるいは筆記における言葉について
 会話についていったり参加したりすることが困難になる。会話の途中で止まってしまったり、どうやって会話を続けるかまったく判らなかったり、同じ会話を繰り返すようになる。語彙が減少し、的確な言葉が見つかりづらく、物の名前を間違ったり(例:「腕時計」を「手の時計」と呼ぶ)する。
(7)物を置き忘れたり、記憶を辿ることができない
 通常では置かないところに物を置いてしまう。失くし物をしても、記憶を辿って見つけることができない。時には、他の人が盗んだと責める。このような状況は、時とともに頻度が増える。
 一般的老化では、時々めがねやリモコンなどといった物をどこかに置き忘れる。
(8)判断力が低下
 判断力や決断力に変化。例えば、金銭を扱う判断力に欠け、電話での勧誘に多額のお金を払ったりする。身なりが不潔になる。
(9)仕事あるいは社交的活動をやめてしまう
 趣味、社交的活動、仕事のプロジェクトやスポーツをやめてしまう。趣味の活動を最後まで終わらせることができなくなる。一般的老化では、仕事、家庭、社交的義務を時々避けたがる。
(10)気分および性格の変化
 気分および性格が変化し、混乱、疑心、抑うつ、または怯えたり不安がったりする。(つづく)

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