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日本の刺青文化の将来憂う=日系和彫り師、島田さん=(下)=「和彫り職人が消えてしまう…」

クレジットカードの機械の広告。タトゥー文化が浸透しているブラジルでは、こんな広告にも彫師(の腕)が当たり前にでてくる

クレジットカードの機械の広告。タトゥー文化が浸透しているブラジルでは、こんな広告にも彫師(の腕)が当たり前にでてくる

 島田さんは2014年に帰伯し、リベルダーデ区ガルボン・ブエノ街に『Shimada Tatoo』を開店した。帰国理由を聞くと「当時、外国人客が減っていた。あと刺青を彫る職業が社会的に認められていないこと」と挙げた。
 例えば、日本では彫師は職業として認められていないため、不動産を借りることができなかったという。またタトゥーマシーン(刺青用の機械)やインクは国内で生産されていない。しかも当時は刺青用の道具の輸入が禁止されており、必然的に裏社会の仲介者から購入するしかなかった。そんな商売しづらい環境があるようだ。
 その点、ブラジルの方がタトゥー文化は一般化している部分がある。若者がひいきのサッカーチーム、選手を彫ったり、気に入ったメッセージを入れるのは日常的に見られる光景だ。職業としても認められている。
 島田さんは、「刺青は文化なのに、日本では理由もなく『見るのも嫌いだ』と言う人が多い。刺青は『ヤクザ』というイメージが強いから」という。「彫師は医師免許がないとダメとかいって(昨年)9月頃には裁判があったし、大衆浴場では隠すことを求められる。伝統の和彫りを継ぐ人もいないし、日本の刺青はもうダメだと思う」と方を落とした。
 リベルダーデ店に来る客の9割は日系人で、訪日経験がない。でも「なにか日本的なものを」と求めてくる。困るのは「侍や花魁の絵を入れて欲しい」という注文が来ることだ。本物の和彫りでは侍や花魁は描かない。お守り的な意味合いで神や仏、動物、水滸伝の英雄の姿を入れる。
 そんな和彫りの歴史を理解してもらえず、口論になることも。「日本の日本人がわけもわからず『好きだから』といってマリアや変な英語を彫るのと一緒」と呆れた様子。「あくまでも本物を」が島田さんの姿勢。ちなみに手彫りの道具も自作だ。13歳から彫り始めたが、意外なことに自分の体には1つも刺青がない。理由を尋ねると「『彫ること』が好きなんだ」とおどけた。
 最近のタトゥー(刺青)に関する世界のニュースを嘆く。「ネットのせいだと思うけど、バカが増えてるんだ」と顔や眼球に「一生もの」の刺青を入れる人がいることを話した。「『面白さ』『ネットのコメント数』とか他人からの反応を求めてるんだよ」と顔をしかめ、吐き捨てるように言う。
 「こういうバカがいるから法律でどうにかしなきゃ!という規制が増える。勉強していない彫り師も増えてきた。ただ、医師免許が必要とか変な風に決めてしまうと『もぐり』でやる人が出てきてしまう。コントロールもしっかり考えてやらないとダメだよ」と注意を促した。
 島田さんは「刺青の歴史は古く、技術は深くて大事なもの。文化の一部だよ」とうなずきながら熱く語る。「だから、浅草とか本場で和彫りをやってるおじいちゃんはめっちゃ怖いし、日本語を喋れない外国人は大嫌い。いわゆる職人気質」と肯定する。
 ただし、物事には裏面もある。そんな昔気質を嫌う現代日本の流れもあり、「日本人の顧客が減ってるから、そのうち消えてしまうんじゃないかな」と天を仰いで和彫りの将来を憂いた。
 欧米型のタトゥーが一般的なブラジルで、島田さんはひたすら和彫りを貫いている。(終わり、國分雪月記者)


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 日系彫り師島田俊夫さんは、「そういえば、日本時代に、一度すごい変な客が来た。刺青を彫るのが目的じゃなくて痛みを感じに来た、みたいな。ちょっと気持ち悪かったよ」と笑いながら話した。「侍や花魁は彫らない」という島田さんだけに、「ブラジルらしい絵柄」もおそらくダメだろう。万が一にも「日伯融合タトゥー」という新境地を開拓し、『イグアスの滝に昇り竜』とか、『蓮の葉の上の如来の代わり、コルコバードのキリスト像』などの絵柄を作って和彫りで入れたら、ある意味、すごいことかも?!

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