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110周年記念リレーエッセイ=若手・中堅弁護士が見た=日伯またぐ法律事務の現場=第4回=「有限会社」設立が圧倒的という現実

 ブラジルに帰国をして、9年目になります。夜間の大学(法学部)に通いながら、日本人のお客様をサポートする法律事務所で研修をさせてもらい、そこで、主にブラジルに子会社を設立したいお客様のために現地法人が設立できるまでに必要な手続き、すなわち、定款の作成や登記のみならず、連邦国税庁における登録手続き、資本金の送金に関わる手続き、口座開設、査証申請などのお手伝いをしていました。
 その他にも、会社設立後の相談、特にブラジルの複雑な労働法や租税法に関する相談を受け、各分野での専門弁護士と組んで対応していました。上記の経験を活かし、現在も大手の法律事務所のジャパン・デスクの一員として日本人のお客様を対応しています。
 ブラジルと日本の制度で、会社を設立する上で大きく違うこととして、一番先に頭に浮かび上がることは設立される会社形態であることが言えるでしょう。
 日本では、「株式会社」または「合同会社」を設立することが一般的であると思いますが、ブラジルでは、「有限会社」を設立することが圧倒的に多いです。
 特にブラジルに進出する企業のほとんどが株式会社であり、日本で有限会社が廃止となったため、有限会社に関する知識が薄いことを実感しました。
 そのため、文書を交換するときにそのことを十分に理解していないと、話がずれてしまって、何度も同じような内容を繰り返して聞くこととなり、挙句の果てに弁護士報酬だけが加算されチャージされてしまうことになります。
 そのほか、「ひとつのことを細かく慎重に行うことで成功に導かれる」というのが日本人の性格だと認識していますが、ブラジルでは、大胆に「やってみないと分からない」ことがたくさんあり、非常に苦労される駐在員の皆様も多くいらっしゃると思います。
 もちろん、何度も同じことをやっていれば、どのように当局が判断するかが分かってくるのですが、それまでに同じようなケースでも全く違う判断があったりすることがあります。
 さらに、毎年、審査官の入れ替わりがあり、その都度に違う意見が現れたりすることも稀ではありません。これは、行政手続きのみならず、司法手続きにおいても同様です。現在は、昨年11月に施行された労働法の改正のさまざまな論点について、労働高等裁判所(TST)や連邦最高裁判所(STF)がどのように判断されるか、非常に期待されているところです。
 上記のとおり、私が日常業務の中で感じていることをざっくりと書かせていただきました。ですが、上記以外にも実務的な違いだけでなく、法律に対する意識の違いがたくさんあるでしょう。日本で教育を受けた背景を活かして、できる限りこのような摩擦が起こらないようにしていきたいと思います。

島野パトリシアさん

島野パトリシアさん

 島野パトリシア。1985年パラナ州マリンガ市生まれ。10歳の時に訪日し、日本で公立高校を卒業。2009年にブラジル帰国後、法学部に通い、2014年在学中に司法試験に合格。ブラジルの弁護士。2018年1月にJICA日系研修員事業、中小企業連携促進のための企業法務コースの研修生として再訪日。現在、大手法律事務所に所属し、日本企業をサポートし続けている。連絡先:patricia.shimano@outlook.com

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