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どこから来たの=大門千夏=(100)

 何年たっても同じ状態が続いた。子供達が、「うちの母はね、音楽が鳴りだすと血相を変えて怒るの、本気で怒るのよ、あんな人見た事ない」と話している。かといって日々の生活に別段困る事もなく、以前と同じように昼間は仕事をし旅行もする。良くなろうという努力を最初はしたが、今では無音の生活に慣れてこれが普通になっている。  ただどうしてこん ...

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どこから来たの=大門千夏=(99)

 夜、山田さんに食事をごちそうになる。彼もこの国に遊びにきて女性に捕まった一人である。どうしてこんなに簡単に沈没してしまうのだろうか? フィリピンに観光に来て帰る日、土産物屋をのぞいたらかわいい娘がいて、すっかり意気投合してそのままこの国にいついたそうだ。…ヤレヤレ…と私はため息をつく。そしてこの国の腐敗の話を聞く。ブラジルの二 ...

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どこから来たの=大門千夏=(98)

 彼は日本の大手の建築会社に務めていた事、ほとんど世界をまたにかけての仕事で外国生活の方が長かった事。「定年間際、アフリカで駐在員をしていた時、家内が急死しまして私一人になってしまいました。日本は住みにくい。どっか外国に…と考えて、まず昔仕事で来たことのあるフィリピンに来たんです」。  ここで早速三〇歳年下のフィリピン人女性を見 ...

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どこから来たの=大門千夏=(97)

 午後から博物館に行ったがここにも何もない。こんなに文明文化のない国を見たのは初めてだ。  しかし、考えてみると一六世紀から三三〇年間スペインの植民地になり、其のあと五〇年間アメリカの植民地になった。独立できたのは一九四六年である。自国の文化を持つ余裕などなかった。求める私の方が間違っていたのかもしれない。  両替屋に行った。一 ...

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どこから来たの=大門千夏=(96)

 我ながら情けないとは思うけど、ウラシマ太郎は故郷が恋しくなってきたが、私は孤独が恋しくなってきた。  一人になりたい。一人で静かに食事をしたい。これ以上、大勢と一緒にいたくない。そのためにはこのクスコの町を去らねばならない。  その夜、急に仕事ができてリマに帰らなくてはならないとウソをついて、ホテルの主にビアーネに連絡を取って ...

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皇族の短歌130首=来伯時の想いを詠まれた歌も

詩集の表紙

 サンタクルス病院(石川ヘナト理事長)は開院79周年と日本移民110周年を記念して、『詩集 皇族の短歌』の刊行した。130首を日ポ両語で収録している。  日伯修好120周年を迎えた2015年に天皇皇后両陛下の短歌120首を収録した詩集を刊行していて、今回はそれに他の皇族が詠まれた10首を加えた。  冒頭には、両陛下および秋篠宮同 ...

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どこから来たの=大門千夏=(95)

 四人で一〇分くらい歩くと大きなレストランに着いた。中はもうお客でいっぱい。よっぽど安くておいしい店にちがいない。  任せるからというと、三人でキャッキャッと騒ぎながら注文して、四人分がたくさんの大皿に山ほど盛られてきた。  私に気を遣いながら三人は目をキョロキョロさせて頬張る。若い人は気持ちいいなと思いながら私も食べた。トウモ ...

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どこから来たの=大門千夏=(94)

 「横に座っていいかしら」突然、片手に本を持った女学生が声をかけてきた。  ベンチの端に肩から荷物を下ろすと腰かけて、教科書をとりだして読み始めた。化粧気はなく黒い髪をまっすぐ長くのばし、日本人に良く似た顔。私の事が気になるらしい。  「中国人ですか?」  「いいえ、日本人よ」  「どこから来たの?」  「ブラジルからよ」  「 ...

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どこから来たの=大門千夏=(93)

 アステカのカレンダー・ストーン。本物を是非見たいものだ。私の心にこの思いがデンと居座ってしまった。  アステカの前に興隆したマヤ文明は、メキシコのユカタン半島を中心に栄えた。彼らは天体鏡も、望遠鏡も持っていなかったのに、太陽の動きばかりか、月の周期についても知りつくしていたし、肉眼では絶対見えない冥王星、海王星のことまで知って ...

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ピンドラーマ=5月号

 コジロー出版のブラジル情報誌「ピンドラーマ」5月号が出版された。  新連載「せきらら☆難民レポート」はブラジルにたどり着いた難民を取材。「等身大の難民像を探ってみます」とし、第一回目はアンゴラ出身の青年に話を聞く。  また、好評連載中の「ブラジル版百人一語」「白洲太郎のカメロー万歳」「クラッキ列伝」のほか、恒例のグルメ、イベン ...

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