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俳句

第37回念腹忌、第27回潔子忌、第5回牛童子忌 全伯俳句大会(2015年10月18日)

【席題特選句  寿和選】

生涯の学びの場とし念腹忌  西山ひろ子
娘に添はれ空馳せて来し念腹忌  小原 加代
国貧し黄金に燃ゆる金鳳樹  西谷 律子
薩摩芋供へ床しき潔子の忌  原 はる江
八百号言祝ぐ年の念腹忌  西山ひろ子
俳諧てふ生きるともし火念腹忌  馬場 照子
歳時記は私の聖書牛童子忌  二見智佐子
初咲きのパウブラジルに畑明し  古賀マリア
せっかちな児大らかな児のシャボン玉 西川あけみ
素十師も涙す献身潔子の忌  香山 和栄

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ニッケイ俳壇(865)=富重久子 選

サンパウロ  近藤 玖仁子

夏衣身も心まで解き放つ
【この頃のお天気はどうであろう。ある朝は早春の様に肌寒いかと思うとひと雨の後は、むしむしとまるで真夏の午後のように暑苦しい。この句のように、夏服に着替えると身も心も軽く本当に晴れ晴れと心地良い。「夏衣」という初夏の清々しい季語のよく落ち着いた佳句であった】

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ニッケイ俳壇(864)=星野瞳 選

サンパウロ  湯田南山子

春暁の夢や邯鄲のものがたり
少年の口笛に応ふ朝サビア
日本館はサビアの宿と申すべし
歩行器をはなせぬままに春闌けし
大連休やすみ疲れて夏時間

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ニッケイ俳壇(863)=富重久子 選

『サーラ・サンパウロ』はサンパウロ市内の音楽堂。

サンパウロ  田中美智子

惜春の一夜の夢かヴァイオリン
【週末になると娘や孫達はよくコンサートに出かける。「サラ、サンパウロ」文教の「日曜コンサート」など。音楽は本当に心癒される。作者は音楽が好きで、コーラスで歌いピアノを弾きコンサートに行って素敵な俳句を詠む。季語の「惜春」(春惜しむ)という、これほど的確な季語の選択は素晴らしい。ちょうど最近の、尽きようとする春を惜しむ想いの言葉で、暮春や行春と同じ意味であるが、春惜しむというと何となく柔らか味のある響きに聞こえて、暫くは瞑想にふける】

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ニッケイ俳壇(862)=星野瞳 選

『念腹忌』とは、ブラジルに俳句を広めた第一人者の佐藤念腹の命日忌のこと。ホトトギスの門人で、高浜虚子の客観写生、花鳥諷詠を理念とし、ブラジルの自然をそのまま詠んだ俳人。ブラジルでは毎年、念腹忌に俳句大会が開催され、直弟子から孫弟子まで多くの人が参加する。

アリアンサ  新津 稚鴎

受難日の肉屋の台にある聖書
草笛に今も力行応援歌
ひやひやと雨をこぼしぬ鳥曇
ランプ下げ通いし句会念腹忌
アラポンガ鳴き止めば森がらんどう
森の穂にアララが騒ぎ初明り

【投句者・新津さんは十年ぶりに第二句集を出された。この十月三日で満百才になられた作者に、心から拍手を送りたい。第二句集から六句を頂いた】

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ニッケイ俳壇 (861)=富重久子 選

オンドル

プ・プルデンテ  小松 八景

南洲に煙突多し日脚伸ぶ
【「南洲に煙突多し」とは、ブラジルでは南にいくほど寒く防寒のため、ストーブを焚いたりペチカを焚いたりするので各家ごとに幾つかの煙突がある。北朝鮮では昔オンドルと言って、床の下に泥で火の通り道をつけどんどん焚口から薪を焚き、油紙の床を温めたものであるが...

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ニッケイ俳壇 (860)=星野瞳 選

サンパウロ  馬場 照子

面影の笑顔遺して桜散る
桜守りを黄泉へいざなう花吹雪
囀りの井戸端会議雄鳥とか
国花てふ誉れのイッペー黄金彩
ジャボチカバ木肌を埋める黒真珠

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ニッケイ俳壇 (859)=富重久子 選

サンパウロ  林 とみ代

心の灯一つ点して春の宵
【「春の宵」といえば日が暮れて間もない、どことなく和やかな明るさの残る感じ。淡い感傷の漂うような若々しい想いのあるものである。
 この句の「心の灯」を点して、という詠み出しから心惹かれた一句である。春宵の明りの中に座りながら、ふと心の中に浮かんだ灯をやさしく点して、過ぎ去った若かりし頃の忘れられない想いを心に描く作者の姿であろうか】

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ニッケイ俳壇 (858)=星野瞳 選

アリアンサ  新津 稚鴎

激つ瀬のひっぱる風や木々芽ぐむ
草萌ゆる野やぽっかりと月浮かべ
鼻振って家の漫歩や蝶の昼
夜蝉鳴く泣き虫の樹が泣き止めば
貯水池に天から降って目高棲む
いさぎよく葉を落としイペ花仕度
水温む鶏が孵せし子家鴨に

【作者・稚鴎さんは来たる十月三日で百才になられる】

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ニッケイ俳壇 (857)=富重久子 選

ツッカーノ

ボツポランガ  青木 駿浪
念願の和牛を試育草青む
【「和牛」は、日本の在来種と輸入種とを使って改良した牛のことで、昔は労役に使っていたが、現在は食肉用として飼育しているとある。  そんな和牛を、自分の農地で試育してみたいという念願があったのであろう。季語の「草青む」が良い選択であった】

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