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連載小説

どこから来たの=大門千夏=(65)

 しかし、本当はなくてよかった。あったら今頃はどこに隠そうか、どこに並べようか、私が死んだら誰に残そうか、と頭を痛めるに違いない―――と虚勢を張ってはいるが、本当は愚痴半分、くやしさ半分から抜けきれないでいる。  神隠しにあってなくなった首飾りの事を友人に話したら、いたく同情してくださって、インドネシアのバリ島から古いとんぼ玉の ...

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どこから来たの=大門千夏=(64)

 欲張り男! ケチ! ブオトコ! いじわる!…自分の財力のなさは棚に上げ、ありとあらゆる雑言を並べ、はけ口とする。悔しくて、腹が立って、何時までも物欲ならず首飾慾にとらわれて頭から離れない。いろいろな発掘品の首飾りが五〇本並べられている様を想像して涙が出るほど悔しい思いをした…いや本当は今もしているのだ。  自分には発掘品の「首 ...

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どこから来たの=大門千夏=(63)

 この気の遠くなるような仕事をしていた人が、一〇〇〇年前に生きていたと思うと私の心臓はどきどきする。今の私と同じように喜び、悲しみ、驚き、希望、絶望…色々な感情を持って生きていたのだ。標高三五〇〇m~四二〇〇mもある酸素の薄い高地に日干し煉瓦や竹材で住居を作り、ジャガイモやトウモロコシを主食にし、時にはチチャという酒を飲んで憂さ ...

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どこから来たの=大門千夏=(62)

「結婚相手よ。これから食事に行くの、今から出かけるけどごめんね…あの人ね、オ・オ・ガ・ネ・モ・チ」と言っていたずらそうにウインクした。  ハンドバックから口紅を取り出すと、売り物の鏡の前でもう一度化粧直しをしてソワソワと使用人に二言三言話してから、「じゃあね、また来てね」と言って出口の方に向かった。  とびらの前で振り返って、店 ...

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どこから来たの=大門千夏=(61)

 皺もなく肌がつやつやして、長いまつげに青い目、形の良い肉付の良い唇、キュッとあがった口角、背中まであるカールした金髪、髪の色だけが変わった。時計が止まったように美しさも止まったままだ。  店の商品の話になると急に骨董屋の厳しい女主の顔にかえり、一つ一つ説明をしてくれて、其のうえアメリカの骨董業界の話までしてくれて私を楽しませて ...

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どこから来たの=大門千夏=(60)

 一人は最高  小雨降る日、ジャルジン区を歩いていたら、新しく出来た骨董店を見つけた。ショーウィンドウにはミッドセンチュリーと言われる時代の椅子と小さな机が飾ってある。  このミッドセンチュリーとは「世紀の真ん中」という意味で、第二次世界大戦後の一〇?二〇年間に、アメリカ、北欧などのデザイナーによって、戦争中に開発されたプラスチ ...

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どこから来たの=大門千夏=(59)

 が、又ソビエト連邦に併合され、一九八九年八月、独立運動の一環として三国の人々が手をつなぎ、六〇〇㎞以上の「人間の鎖」を作った(別名「バルトの道」とも呼ばれている)。エストニア人七〇万人、ラトビア人五〇万人、リトアニア人一〇〇万人が参加したといわれている。一九九一年、ようやく三国揃って独立を果たした。  アレキサンダー氏は私を招 ...

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どこから来たの=大門千夏=(58)

 しばらくすると別の骨董屋が興奮してやって来た。息を切らすようにして、「ジョーナスが売った皿、今ニューヨークで一万六〇〇〇ドルで売ってるって。あの皿、君が売ったんだって? いくら儲けたんだ? エッたったの三〇〇ドル! バカ! 何やっとるかーバッカアーー真面目に勉強せんか!」  店の奥で終日、本を読んでいる暇な骨董屋はなんていいん ...

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どこから来たの=大門千夏=(57)

 ショーウィンドウの中を見ていると、時には何だろうと分からない物がある。「おじさーん」と呼んでみるが、主は本を読みながらチロリと上目使いにこちらを見て、すぐにまた本に目を移してしまう。  しかしこれは子供だからでもないらしい。  大人のお客が来て「すみませーん。これはー」と問いかけてもチロリ。聞こえないふりをして読書している。 ...

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どこから来たの=大門千夏=(56)

 あっけにとられている私の目の前を臆することなく男の傍に直行した。小さいが小太りのがっちりとした体格で、彼女の全財産なのか、まん丸く膨らんだスーパーの袋を右の腕に六~七個、左腕にも同じように六~七個もって、ワンピースの上にほつれたカーデガン、この寒いのに裸足にゴムぞうり。埃まみれの髪にオレンジ色の口紅が暗い電灯の下で華やいで見え ...

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